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〈W杯史に残る誤審劇〉韓国vsイタリアから20年…「レフェリー人生最高の試合の1つ」忌み嫌われた審判モレノが認めない“2つのミス” 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph bySandra Behne/Getty Images

posted2022/06/18 11:00

〈W杯史に残る誤審劇〉韓国vsイタリアから20年…「レフェリー人生最高の試合の1つ」忌み嫌われた審判モレノが認めない“2つのミス”<Number Web> photograph by Sandra Behne/Getty Images

キックオフ前のホン・ミョンボとマルディーニ、モレノ主審。この時は大騒動が待ち受けているとは知る由もなかった

「あの場面では韓国の選手にもレッドカードを出すべきでした。ずっと心残りでした」

 もしファンが退場になっていれば、前半にFWビエリが決めた1点を守りきり、アッズーリが逃げ切っていた可能性は十分にあった。

「ノー、ノー。私のジャッジが試合結果を左右したはずがありません。私の誤審はザンブロッタへのファウルだけです。それ以外に誤審があったとしても、私に一切責任はない」

 モレノは平然と主張する。イタリアの敗退に自分は無関係だ、と。

ミスジャッジは少なくとも2つ存在した

 否、彼が関与した誤審、それも試合結果に決定的な影響を与えたミスジャッジは少なくとも2つ存在した。

 1つ目は、延長13分にFWフランチェスコ・トッティへ出した2枚目のイエローカードだ。韓国ペナルティエリアで倒されたアッズーリの10番に、モレノはPKではなく退場処分を与えた。

 笛を握っていた男の言い分は昔も今も変わらない。

「W杯(の審判ミーティング)では、シミュレーション行為を厳しくとろうという合意がありました。サッカーのゲームは(審判と選手の)心理戦です。選手は笛を吹かれた瞬間に、笛を吹かれたのが相手か自分かわかっている。あの時、韓国の選手は最初にボールに触り、それからトッティに当たった。そしてカードを出した後、トッティは何の抗議もしてこなかった。つまり彼は自らの反則を認めたということです」

 だが、試合の翌々日、大会審判委員会は「モレノ主審のトッティへの警告判定はプレーの流れを無視したもの」で不当だったとする声明を出した。審判委員のフォルカー・ロス(ドイツ)とエドガルド・コデサル(ウルグアイ)から聴取を受けたモレノが「試合中にトッティへのイエローカードが2枚目であることを失念していた」と認めたことも合わせて報告されている。

 2つ目の決定的誤審は、延長20分のMFダミアーノ・トンマージの決勝ゴール取消しだ。数的不利にもかかわらず攻め続けたアッズーリ起死回生の一撃に、主審モレノはオフサイドを宣告し無効とした。

理不尽判定にイタリア国営放送は“キレた”

 この理不尽判定に、試合を中継していたイタリア国営放送RAIは“キレた”。生放送中にもかかわらず、怒り心頭に発したベテラン実況アナウンサーと解説者が、狂気じみた皮肉の叫びを吐き捨てたのだ。

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