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[4.9の真実]村田vs.ゴロフキン、ビッグマッチの舞台裏
posted2022/06/18 07:02
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Tsutomu Takasu
GGGはキレていた。待ちわびた村田諒太との一戦に向けて、ゲンナジー・ゴロフキンは3月31日にトレーナー、フィジカルコーチ、メンタルコーチ、専属シェフ、専属カメラマン、弁護士など総勢15人ほどのチームを引き連れて、アメリカから半チャーター便で来日。そのまま赤坂の5つ星ホテルに入った。ワンフロアを貸し切り、一般客と接触しない導線。すべてはコロナに罹患しないためである。会見や計量など公式行事の会場、体を動かす帝拳ジム以外、彼らはホテルに閉じこもった。
だがここでちょっとした“事件”が起きた。スタッフの一人が、コンビニに買い出しに行ったことが分かったのだ。それを知ったゴロフキンが烈火のごとく怒ったという。完璧とも言える対応をしてもらっているのに、招かれたほうの一瞬の気の緩みから試合を台無しにしてしまっては面目が立たない。最大限にピリピリするゴロフキンがいた。なぜゴロフキンはそこまで怒りを露わにしたのか――。
4月9日、さいたまスーパーアリーナでの開催に落ち着いたWBA、IBF世界ミドル級王座統一戦。推定のファイトマネーは村田6億円、ゴロフキン15億円とされ、金額的にはかつて2度東京ドームで試合をしたあのマイク・タイソンのタイトルマッチをしのぐ国内史上最大のボクシング興行となった。オミクロン株の猛威による水際対策の強化に伴って12月29日に予定していた試合が一度流れ、4月に決まってからも“絶対にコロナを寄せつけてはいけない”もう一つの戦いが待っていた。なぜならここがラストチャンスだったからだ。