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[独占告白]村田諒太「ゴロフキンとの闘いを超えて」
posted2022/06/18 07:03
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Kosuke Mae
追い続け、ようやくたどり着いた名王者との対戦。敗れはしたものの、被弾を恐れず前進し続ける姿に、約1万5000人の観客は喝采を惜しまなかった。そんな名勝負を作り上げた勇者が激闘を振り返る。
メシを食う気がしないんですよね。
村田諒太は苦笑いを交えて、つぶやくようにして言った。
「筋肉を回復させるために食べるとか、明日の練習内容に合わせてこういう食事にしようとか、ボクシングをやり始めて20年くらい、味を楽しむための食事ではなかった。今、体をつくるわけでも、明日(体を)動かすわけでもないから、食事に対する興味がなくなっているんですよ」
日本ボクシング史上最大のメガマッチとなったゲンナジー・ゴロフキンとのWBA、IBF世界ミドル級王座統一戦から、はや1カ月半が過ぎた。激戦を物語っていた顔の傷跡はすっかり消えていた。
百戦錬磨の英雄を執拗なボディー打ちで追い込みながらも、中盤から挽回されて最後はカウンターの前に沈んだ。
プロ初のTKO負け。とはいえあれだけのド突き合いを見せたのだ。“祭りのあと”は心から解放された彼が待っていると勝手に思い込んでいた。
むしろ、逆だった。燃え尽き症候群の類ではない。ゴロフキン戦に臨むための自分と向き合う作業は、いまだ終わっていないように見えた。現役を続けるか、引退するかの結論は出ていない。迷っているのではなく、答えが湧き上がってくるのを待つ時間のなかにいる。解放感なく続く己との戦いが、食事から味気をなくしているのだと思えてならなかった。