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記者の声「ギータ瘦せた?」 交流戦で1試合5三振、本塁打ゼロの異常事態…ソフトバンク柳田悠岐(33歳)に今、何が起きているのか
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/06/14 06:00
ホークスの主砲、柳田悠岐の“低空飛行”が心配だ
記者の声「ギータ痩せた?」
まるで撫でるような弱いスイングを繰り返した。打球が彼方へ飛んでいくはずもなく、ふわっとしたフライがたまに外野へ打ちあがる程度。多くは力のないゴロが転がるだけだった。もちろん唸り声もない。気のせいかもしれないが、背中の「9」が大きく見えた。その印象は他のメディア仲間も同じだったようで「なんか、ギータ瘦せた?」というひそひそ話も聞こえてくるほどだった。
もしかしたら、下半身の具合が良くないのではと勘繰る。
柳田は昨年、アキレス腱痛をずっと抱えながらプレーをしていた。今季に向けてはある程度状態も良くなり、しっかり強化をして臨むつもりだったはずだ。筋骨隆々でウエイトトレーニングに励む姿が似合いそうだが、じつは走り込みを大事にしている。「僕の場合、走っとけば大丈夫です」。キャンプなどではそうやって必死に汗をかく姿がずっとあった。しかし、今年1月の自主トレで新型コロナ陽性となり、練習のスケジュールの変更を余儀なくされた。或いは、シーズン前に“貯金”が出来なかったことが、響いているのではないかとも考えられる。
練習でも全般的に振りが鈍いのは、下半身から体に力を伝えられていないためだろう。好調時には挙げた右足の裏側が投手方向を向いているのだが、今は一塁側ダグアウトを向いていることが多い。いわゆる「壁」を作れず、軸が崩れる形でスイングしているように見える。
ともかく、9日のフリー打撃については、見方によっては無気力練習とも映りかねなかった。だが、藤本博史監督は「自分なりに考えながら練習している」と色めき立つ報道陣を制するように言った。
藤本監督の信頼は揺るがず
藤本監督の、柳田への信頼は絶大だ。
昨年のシーズン終了後に一軍監督の大役を任されて、いの一番に行なったのが柳田へのキャプテン就任の依頼だった。ホークスを知り尽くす男と評される藤本監督は、柳田悠岐を知り尽くす男でもある。指導者人生を歩み始めた2011年は柳田のプロ入団シーズンでもあった。二軍打撃コーチとして当時未熟だったダイヤの原石を磨き上げることに尽力した。一軍打撃コーチに配置換えとなったタイミングで柳田も一軍に定着した。
かつての柳田について、このように振り返ったことがある。
「柳田を表すなら、野球バカですよ(笑)。でもだからこそ、野球に対する姿勢は若手の中でも一番よかった。特打のときは、僕がバッティングピッチャーをやりましたが、彼に投げるのは楽しかった。正直30分も投げたらしんどい。だけど、アイツになら1時間でも投げたくなった。そういう選手はなかなかいない。僕としてもやりがいがあった」