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佐々木朗希の起用法を「甘やかされてる」の苦言は今どきでない… 「完投を重視しない」新時代エース像〈大谷翔平もMLBで完投0〉 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2022/06/07 11:02

佐々木朗希の起用法を「甘やかされてる」の苦言は今どきでない… 「完投を重視しない」新時代エース像〈大谷翔平もMLBで完投0〉<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

巨人戦、5失点で今季初黒星を喫した佐々木朗希。5回89球で降板した

<MLBとNPBの完投投手数の推移>
・MLB(ア・ナ両リーグ)
2012年 128試合/4860試合 2.6%
最多完投 J.バーランダー(タイガース)6試合
2021年 50試合/4858試合 1.0%
最多完投 A.ウェインライト(カージナルス)ら3人 3試合
・NPB(セ・パ両リーグ)
2012年 131試合/1728試合 7.6%
最多完投 田中将大(楽天)8試合
2021年 50試合/1716試合 2.9%
最多完投 山本由伸(オリックス)6試合

 NPBの方が多いとはいえ、投手の完投は全試合数の3%以下になっている。

 大谷翔平はMLBに移籍後、44試合に先発して完投は0。菊池雄星は2019年以後80試合に先発して完投は1試合。ダルビッシュ有は2012年から222試合に先発しているが完投は2試合だけだった。

 MLBで完投は球数が少ないか、ごく一部の「100球を大きく超えても故障しない」投手に限られている。

菅野、大野、山本由伸がいわゆる「先発完投型」だが

 NPBでも、シーズンで何度も完投するのは一部の投手になっている。それをクリアした投手が「登板試合数/25試合以上、完投試合数/10試合以上、投球回数/200イニング以上」などの基準がある「沢村賞」を受賞している。

 その面々は菅野智之、大野雄大、山本由伸などである。ただ、これらのエースは沢村賞受賞後、故障したりパフォーマンスが低下することが多かった。昨年、ポストシーズンも含め3500球を投げ6完投したオリックスの山本は今季も好調を保っている。それでも登録抹消があったし、奪三振率は低下しており、完投は今シーズンここまで1度もない。

 投手の故障のリスクは〈投球強度(=球速)、投球数、投球頻度、投手の疲労度、変化球の有無〉などに左右される。沢村賞を狙うことは、これらの指標が高まることでもあり、故障やパフォーマンス低下のリスクをはらんでいることになる。

「昔の大投手は、球数なんか気にせずに投げて故障なんかしなかった」と言うかもしれない。ただ、昭和の時代に150キロを大きく超える速球を投げる投手はいなかった。「わしの全盛期は180キロは出ていたに違いない」と豪語する大投手もいたとはいえ、それを証明するものはない。

佐々木朗希を象徴する“8回パーフェクトでの降板”

 150キロと160キロでは投球強度は大きく異なる。160キロ超の速球の攻略は非常に難しいが、その剛球を投げるだけで故障のリスクは高まる。

【次ページ】 佐々木朗希を象徴する“8回パーフェクトでの降板”

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