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井上尚弥は本当にドネアを圧倒できる? 米国記者が冷静に分析「今のドネアには新しい力が宿っている」「井上の決断力と度胸が試される」
posted2022/06/07 06:01
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Hiroaki Finito Yamaguchi/AFLO
いよいよ“運命の再戦”の時がやってくる。6月7日、WBAスーパー、IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(大橋)はさいたまスーパーアリーナでWBC同級王者ノニト・ドネア(フィリピン)と対戦する。
2019年11月、両雄は今回と同じ会場で“ドラマ・イン・サイタマ”と称されるほどの激闘を演じ、その際は11ラウンドに決定的なダウンを奪った井上が判定勝ちを飾った。あれから約2年半の時が過ぎ、ついに実現する2人の再戦はどんな戦いになり、どれほどドラマチックな結末を迎えるのか。
リマッチを前に、アメリカのボクシング専門サイト「BoxingScene.com」のシニアライターであり、ドネアとレイチェル夫人の長年の友人でもあるジェイク・ドノバン記者にこの試合の見どころを尋ねた。全米ボクシング記者協会(BWAA)の副会長も務めるドノバン記者の言葉から、アメリカでも注目度の高い一戦への期待感が分かり易い形で伝わってくる。
「激戦になったことに驚かされた」
井上対ドネアの第1戦は本当にすごい戦いになりました。あの試合では、井上のタフネスと粘り強さが世に示されたことが印象に残っています。
プロ4戦目の田口良一(ワタナベ)戦を除けば、井上はどの試合でも相手に押し込まれることはありませんでした。それがドネア戦で初めてと言ってよい苦戦を経験し、序盤に右目の眼窩底骨折という試練まで味わいながら、試合の後半ラウンドには猛然と盛り返していきました。井上がドネアから左ボディブローでダウンを奪った11ラウンドは議論を呼びましたが、より上質なレフェリーに裁かれていれば、KO勝ちを手にしてしかるべきだったのでしょう。
ともあれ、あの試合がこれまでの井上のプロキャリアで最も難しい戦いだったことに疑いの余地はありません。2019年11月7日はプロボクサーとしてのドネアの偉大なキャリアの最終章になると予想していたので、あそこまでの激戦になったことに関しては正直、私も驚かされました。