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《モナコ初制覇》不器用なナンバー2にして苦労人セルジオ・ペレス32歳が、国籍を超えて愛され祝福される理由とは? 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool

posted2022/06/03 06:00

《モナコ初制覇》不器用なナンバー2にして苦労人セルジオ・ペレス32歳が、国籍を超えて愛され祝福される理由とは?<Number Web> photograph by Getty Images / Red Bull Content Pool

F1参戦12シーズン目にして、メキシコ人ドライバーとして初めてモナコを制したペレス

 そんなとき、目の前に現れたのがペレスだった。優勝経験を持つペレスの実力は折り紙付きだったが、それ以上にレッドブルにとって重要だったのが、ペレスのベテランとしての経験と幾多の苦境を乗り切ってきた精神面の成熟だった。これまでの若手がフェルスタッペンに対して過度なライバル心を持つがため自滅していく中、ペレスならばフェルスタッペンの実力を受け入れる懐の深さを持ちながら、自身を失わずに自分のレースができる強靭な精神力があると判断したからだ。

 チーム代表のクリスチャン・ホーナーはペレスを高く評価する。

「チームに加入したばかりの昨年は苦労するところもあったが、それでも慌てず、エンジニアとしっかりとコミュニケーションをとり、少しでも早くレッドブルのマシンに慣れようと努力していた。だから、われわれは彼と22年も一緒に仕事することを選んだ。すると今年は、昨年以上のパフォーマンスを見せるようになった。すでに第2戦サウジアラビアGPではマックスを上回ってポールポジションを獲得していたし、このモナコGPでは週末を通して、終始チームメートを圧倒していた」

レッドブルはペレスとの契約を24年末まで延長

 モナコで勝利した者だけが許されるロイヤルボックスで聞く自国の国歌。メキシコ国歌が流れると、期せずしてペレスの目から涙がこぼれてきた。

「F1にデビューして、初めてモナコを走ったとき、いつの日かここで優勝したいと思った。でも、モナコは特別な場所。だれもがここで勝ちたいと必死に挑んでくるからね。ここまで本当に長かった。でも、今日その夢が叶った」

 それから2日後、レッドブルはペレスとの契約を24年末まで延長したことを発表した。ペレスのF1ドライバー人生も、そして成長も、まだ続く。

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