サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
ドイツ地元記者が語る、23歳伊藤洋輝が“発見された”瞬間「Google検索しても引っかからない」けど「W杯メンバーに入るのでは」《日本代表デビュー》
text by
円賀貴子Takako Maruga
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/06/03 11:05
6月2日のパラグアイ戦で日本代表デビューを飾った伊藤洋輝。左SBでスタメン出場し、後半からはCBのポジションについた
キッカー誌のモシディス記者とシュツットガルト新聞のプライス記者の両方が最も感心しているのは、「伊藤のコンスタントさ」である。
「まずプレーにムラがない。キッカーの採点で僕が伊藤に5をつけたことはないと思う。まず3、悪くても4なんだ」とモシディス記者(キッカー誌の採点は1〜6で、最高が1、最低が6)。「1シーズンを通して同じクオリティーを提供できるから、残留競争にどっぷりで苦しい戦いが続く中でも監督は使い続けることができた」とプライス記者も言う。
5月20日、シュツットガルトはジュビロ磐田とのレンタル契約に付いていた買取オプションを行使して、伊藤と2025年6月までの3年契約を交わした。
ちょうど同じ日に6月の代表戦に向けて発表された日本代表メンバー28人の中に伊藤の名前があったことに、モシディス記者は驚いていない。「今季の活躍が報われた」と言う。「日本代表のことをよく知らない僕がいうのも何だけど、このまま怪我などの不運がなければ、伊藤は来季のW杯までの数カ月で、さらに飛躍するだろう。そうすればW杯の最終メンバーにも入るのではないか」と期待するのだ。その上で「左利きの選手の中でも特に巧い左足、ダイアゴナルパス、シュート力、ヘディングの強さはセールスポイント」だと見ている。
シュツットガルトがブンデスリーガ1部に残留できたのも大きい。W杯までにドイツ代表の主要メンバーを擁するバイエルンや、他のトップレベルのチームと引き続き対戦することができるからだ。
地元記者も知りたい素顔「Google検索してみたが」
モシディス記者とプライス記者には、来季こそ実現させたいと思っていることが一つある。伊藤のインタビューである。
2021-2022年シーズンはコロナ禍で選手との接触が厳しく制限され、ミックスゾーンもシーズン終了間際まで開かれなかった。そしてシュツットガルトが長く苦しい残留競争に巻き込まれたこともあり、地元紙でさえも無理にアポの打診をするのは憚られた。だからピッチ上以外の伊藤のことは誰も何も知らないというのが実情らしい。冒頭の「白紙だ」が現在形なのは、それが理由でもある。
「どんなことでも知りたいと思ってGoogleで検索してみたが、何も引っかからない」(モシディス記者)、「声も聞いたことがないし、雲のように掴みどころがない」(プライス記者)。伊藤選手がどんな人間なのかを、みんなが知りたがっている。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。