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オリンピックPRESSBACK NUMBER
イ・サンファの告白…平昌までの4年は「しっかり眠れた日がありませんでした」五輪連覇のレジェンドが語る、“表情が明るくなった”結婚後の今
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by事務所提供
posted2022/06/03 17:05
スピードスケート女子500mの韓国代表として冬季五輪に4度出場し、金メダル2個、銀メダル1個を獲得した李相花さんに、引退に至るまでの葛藤や近況を聞いた
李さんが言葉を継ぐ。
「実は引退を決めるのが難しかったのです。まだ競技を続けられる身体ではあったのですが、膝が万全の状態に戻らなくて……。その時彼は『これだけやってきたのだから、辞めてもいいのでは? 結婚生活をしながら他のことをやればいいのでは?』と言ってくれました」
国民の期待を、強い責任感で背負ってきた李さんの心の中で、張り詰めていたものがフワッと緩む言葉だったのだろう。
李さんはさらに、今の率直な思いをこのように語る。
「私は、まだまだ自分が狭い範囲に閉じこもっているところが多いと感じています。7歳から30歳前までスケートのトレーニングをしてきましたから、まだその枠の中にいるというイメージはあります」
インタビューで語られた言葉には、偽らざる今の心境が詰まっていた。
「男子選手と同じグループで…」ハンデを埋めた猛練習
現役時代の李さんは、とにかくすごい人だった。身長は163cm。欧米人に比べれば小柄だ。
「小さい時から、ヨーロッパの選手を見ると体格では絶対に勝てない、と思っていました。欧米の選手はだいたい170cmくらいが平均的な身長ですし、私たちは足の長さも彼女たちと比べると短い」
体格のハンデをどう埋めるか。韓国のジュニア代表たちがやっていたのは、男子選手と一緒に練習をすることだった。
「どうやれば強くなるか。どうやればリンクを強く蹴り、推進力を上げることができるか。お兄さんたち(男子選手)を超えれば、ヨーロッパの選手にも勝てると考えました」
韓国ジュニア代表合宿などで、李さんは選抜された女子選手数人とともに男子選手と同じグループでトレーニングをした。
「コーチから『サンファは男子のグループに行きなさい』って。そこ(男子グループ)の練習メニューは負荷も倍だし、セット数も多い。お兄さんたちも、あなたはこれをやらないとダメだよという目標をくれました」