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「一体、私は誰のために滑っているのか」止まない誹謗中傷、挫折…どん底の本田真凜を救った“浅田真央の1時間レッスン”

posted2022/05/30 11:04

 
「一体、私は誰のために滑っているのか」止まない誹謗中傷、挫折…どん底の本田真凜を救った“浅田真央の1時間レッスン”<Number Web> photograph by Miki Fukano

フィギュアスケーターの本田真凜。「浅田真央2世」と呼ばれた天才少女の今に迫るロングインタビュー

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

photograph by

Miki Fukano

日本中の期待を一身に受けてきたフィギュアスケーター・本田真凜。世界ジュニア選手権を14歳で制し「浅田真央2世」と呼ばれた天才少女は、昨年20歳を迎えた。すでに18年にも及ぶスケート人生について本人が語った(全3回の2回目/#1#3)。

 シニアになってシーズンを過ごしていく中、本田真凜は大会後に決まって、「ジュニアの頃のように」と繰り返し口にしていた。

「ジュニアとかノービスの時代は練習よりも試合を楽しみにしていて、試合を頑張ろうという感じでした」

 なのに、シニアになってから試合を楽しめない自分がいた。

 アメリカに拠点を移し、これで自分のペースで過ごせる、そんな希望も抱いた。だが、過熱した周囲の注目や関心はおさまらない。さらに傷つく事態もあった。

やめられないエゴサーチ「傷つくと分かっていても…」

 本田がメディアで取り上げられれば、その記事やSNSには様々なコメントが書き込まれた。いろいろな人がいる。だから、批判的な言葉や悪質な誹謗中傷もあった。今や、スポーツに限らず、大きな社会問題ともなっているが、本田もその標的となった。

「たくさんいいコメントがあったとしても、自分にとって傷つく言葉が1つあったら、それがずっと心に残ってしまって……。わざわざそういう言葉を探すようになっていた時期もありました」

 気にしなければいいのにと思う人もいるかもしれない。だが、一度目にしてしまえば、「他にももっと書かれているのではないか」と不安は募る。そうした心理に陥ってしまうのは、なにも本田だけでなく、多くのアスリートや著名人はもちろん、もしかすると、有名無名に限らない。

 また、見てもらう、表現をし伝えることを内包するフィギュアスケートの選手たちは常に演技への反応を気にしてしまう環境もある。本田は言う。

「選手は皆さんよく自分の演技の反応をエゴサーチしているんです。例えばアイスショーで初めてプログラムの演技をしたときに、お客さんの反応が知りたくて、空いている時間に一斉に検索していたりする。見慣れた光景ですね。でも、私は悲しくなったり傷つくのは分かっていても、自分から探しにいってしまうんです」

 本田があらゆる状況に葛藤し、成績もジュニアの頃とは異なる一方で、同世代の選手たちが成長し、活躍していた。しかし、不思議とそれが苦になることはなかったと言う。

「私はずっとそれぞれのスケーターのファンなんです。小さい頃から一緒にやってきて、みんなのことをよく知っているので。いい演技をしていたりすると純粋にすごく嬉しい。私が悩んでいることにも気づいて声をかけてきてくれたり、手紙を書いてくれる人もいました。スケーターって、みんな優しいんですよ」

深まる葛藤「私にとってスケートって何なんだろう?」

 アメリカに移籍した本田だったが、大学進学などもあって、日本に帰国。しかし、同時期に新型コロナウイルスの感染が拡大し、フィギュアスケートも無観客での試合が続いた。それが本田の葛藤をさらに深める。

【次ページ】 「スケートから離れたくなりました。やめたい」

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