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坂本花織25歳が泣いていた演技直前「日本が大変なことになる」「緊張半端なかった」全日本選手権“会心の優勝”のウラにあった「GPファイナルの失敗」

posted2025/12/25 11:02

 
坂本花織25歳が泣いていた演技直前「日本が大変なことになる」「緊張半端なかった」全日本選手権“会心の優勝”のウラにあった「GPファイナルの失敗」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

全日本選手権での自身最後の演技を、完璧に締めくくった坂本花織

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph by

Asami Enomoto

 月並みな表現でも、圧巻、と言うほかない。

 12月21日、フィギュアスケートの全日本選手権女子フリー。最終滑走、坂本花織はミスのない演技を披露して優勝を飾った。

 国内大会であるため国際スケート連盟非公認ながら、自身の持つ今季世界最高であるフリーの150.13点を上回る154.93点、合計得点227.18点を大幅に更新する234.36点。圧巻の数字で、大会5連覇を達成した。そして規定により、選考会議を待たず自動的にミラノ・コルティナ五輪代表の座を射止めた。

坂本花織は泣いていた「いつも以上にがちがち」

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 約2週間前、グランプリファイナルではショートプログラムで思いがけない失敗があり5位、その影響で最終的に3位で終えた。それを繰り返さず、79.43点の高得点で、ショートプログラムを終えてトップに立つ。

 ただ、フリーを迎えての緊張は「半端なかった」と言う。2位の島田麻央も79.33点のハイスコアを出し、点差はわずか0.1点であったからだ。島田だけでなく、オリンピックの代表を巡り、今シーズン、好成績を残した選手たちもいる。

「優勝してオリンピックの代表を決める」ことを目標にしていたから、重圧がのしかかった。

 坂本を指導する中野園子コーチも証言する。

「今日のプレッシャーは半端なかったです。今日はいつも以上にがちがちでした」

 自身の演技の番が来る前、坂本は泣いていたという。それも不安と緊張がどれほどであったかを物語っている。

 泣いていたとき、坂本は中野コーチから言葉をかけられたという。

「花織がここでやらないと、日本が大変なことになるから、あんたがここでしっかりやらないと駄目なのよ」

 日本が大変なことに……? 

「何か斜め上から言葉が来たので、面白かったです。ちょっとだけ気が紛れました」と坂本は笑顔で振り返り、こう続けた。

「それでもめちゃくちゃしんどかったです」

【次ページ】 会心の演技のウラに「GPファイナルでの失敗」

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