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今年誕生した“JRA初”の女性調教師「女性であっても男性と同じ土俵で戦える職業」 前川恭子厩舎、開業から3カ月の現在地
posted2025/06/29 06:00

前川恭子厩舎、開業から3カ月の現在地
text by

片山良三Ryozo Katayama
photograph by
AFLO
今年開業した前川恭子調教師が初めて注目されたのは、2022年10月に発表された'23年度のJRA調教師試験の一次試験に合格してからのことだ。
個人情報保護の観点から一次の発表は受験番号のみの公開だが、例年130人前後が集まる受験者はほぼ厩舎関係者ばかりなので、誰が合格したか(この年は東西で23人)は毎年その日のうちに判明してしまう。
「本当は3年連続不合格からの、ようやくの一次初突破だったんですが、不合格の履歴はバレてないですからね(笑)。自分の番号が掲示板に張り出されてからというもの、“頑張ってね”と声をかけてくださる方が何人もいらっしゃって、一次合格の重さを感じました」
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その年の二次の合格発表に前川の名前はなかったが、翌年の受験は堂々の連続一次合格。そして二次も合格して、'24年度のJRAの新規調教師に女性として初めて名を連ねることとなった。
典型的な男性社会と思われていた競馬村の中で…
地方競馬では7人の女性調教師が現役で活躍中。騎手時代は別府真衣として活躍し、結婚して宮川姓に変わり調教師に転身した高知の宮川真衣が有名で、ほかにも川崎の安池成実、ばんえいの谷あゆみ、金沢の高橋優子、浦和の平山真希、入口由美子、名古屋の沖田明子と、典型的な男性社会と思われていた競馬村の中で奮闘を続けている。
海外に視野を広げると、世界各国にたくさんの女性調教師が存在していて、大きな実績をあげている人もいる。名馬トレヴで'13年、'14年の凱旋門賞を連覇したクリスティアーヌ・ヘッド調教師('18年に引退)は世界的な名トレーナーとして聞こえていたし、豪州のゲイ・ウォーターハウス調教師は、2歳戦では世界最高賞金を誇るゴールデンスリッパーSを7勝するなど、リーディング常連に君臨する女傑トレーナーとして知られている。「女性であっても男性と同じ土俵で戦える職業の一つ」と、前川は早くから気づいていたという。
JRAが女性を調教師として採用(現実として、調教師試験はJRAの主管による採用試験なので、この表現が最もしっくりくる)したのは、社会の時流から見ればむしろ遅過ぎたぐらいだが、前川ほどの大きな熱量を持った候補者がいなかった、ということもあったろう。