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「キングカメハメハは『絶対に勝つ』と確信していた」安藤勝己が語った“ダービーを勝てる人馬”の条件「やっぱり運も必要かな」
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKeiji Ishikawa
posted2022/05/27 11:20
“アンカツ”の愛称でおなじみの元ジョッキー安藤勝己。通算4464勝(JRA1111勝)をあげ、現在は競馬評論家として活躍している
「マイル向きの馬ではないのに、前走のNHKマイルCをぶっちぎったでしょう。その時点で、夢を見たわけではなく、『ダービーは絶対に勝つ』と確信したんです。どんなレースをしても負けないと思った。だから、家族も呼んでいたんです。実際、ぜんぜんいいレースではなかったですよ。強引に行って、馬の力だけで勝った。それだけ安心して乗れる馬だったし、追えばどこまでも伸びる馬だったんです」
安藤のキングカメハメハは2分23秒3のダービーレコード(当時)で優勝した。
「もちろん嬉しかったけど、ほかのGIと同じでした。自分のなかでは、前の年、ビリーヴで中央のGIを初めて勝ったときのほうが喜びが大きかったし、興奮しましたね。馬にとってダービーは一生に一度のチャンスでも、騎手にとって、どのGIが一番上だと感じるかはその人次第だと思う。ぼくにとって、あのダービーは、強い馬が勝っただけ、というレース。あの馬じゃなければああいう気持ちで乗れなかっただろうし、誰が乗っても勝ったと思いますよ」
東京芝2400mはマグレでは勝てない
その後も、騎手としてのラストイヤーとなった'12年まで毎年ダービーに騎乗し('10年ダノンシャンティは取消)、'11年はウインバリアシオンで2着になっている。そんな彼が考える「ダービーを勝てる馬」とはどんな馬なのか。
「東京芝2400mはごまかしが利かないから、能力がないとダメ。マグレでは勝てないよね。あと、精神的にしっかりしていないと厳しい。'07年に乗ったフサイチホウオーは1番人気だったんだけど、性格がきつくて、ダービーのときはゲートに着くまでに消耗してしまった。ダービーの日は、お客さんだけではなく、厩舎関係者もいつもと違って、ゲート裏の雰囲気までピリピリしているんですよ。馬って敏感だから、そういう空気を感じ取るんです。それでも普段と同じような感じでいてくれる馬じゃないと、ダービーで勝負できないと思う」