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「キングカメハメハは『絶対に勝つ』と確信していた」安藤勝己が語った“ダービーを勝てる人馬”の条件「やっぱり運も必要かな」
posted2022/05/27 11:20
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Keiji Ishikawa
競馬関係者なら誰もが憧れ、それゆえ緊張する一大事。だが、そんな重圧などどこ吹く風で勝利を飾る男もいる。笠松競馬場出身の元たたき上げジョッキーが語った、独自の“ダービー観”と大舞台への心構えとは。“アンカツ”こと安藤勝己さんがダービーについて語った記事を特別に無料公開します。<初出:Sports Graphic Number 927号(2017年5月18日発売)、肩書などはすべて当時>
武豊は「普段からいかにダービーを意識するかが大切」と考え、10度目の参戦でダービー初勝利を挙げた。「ダービーの勝ち方」を自分のものにし、最多の5勝をマークしているわけだが、彼とは対照的な姿勢で、すんなり栄冠を手にした騎手もいる。
安藤勝己がその典型である。
「日本ダービーに対する特別な思いは、正直、あまりなかったですね。ぼくのように地方にいた騎手にとっては、中央のGIはどれも同じように華やかに見えたんです」
ダービー初騎乗は、まだ地方に在籍していた2002年のことだった。
「藤沢(和雄調教師)さんのところにいたサスガという馬です。人気もなかったし、特に初参戦の感慨はなかったですね」
サスガは11番人気で17着に終わった。
NHKマイルCで確信「どんなレースをしても負けない」
翌'03年、安藤はJRAに移籍し、3月の高松宮記念をビリーヴで優勝、JRA・GI初制覇を果たす。そして同年のダービーにザッツザプレンティで臨み、3着。
「このときも特別な気持ちにはならなかった。そんなに夢を持っていなかったんですよ。レースに勝とうと思って乗ったことは一度もないんです。そうすると冷静になれなくなる。夢を持って乗ると、ろくなことがない(笑)」
そして'04年5月30日、キングカメハメハで第71回日本ダービーに参戦。このときも「勝とう」と思わずに乗ったのだろうか。