新刊ドラフト会議BACK NUMBER
『日本バッティングセンター考』先駆者が「救われた」一冊。バッセンは続くよ、どこまでも。
text by
吉岡雅史Masashi Yoshioka
photograph bySports Graphic Number
posted2022/05/17 07:00
『日本バッティングセンター考』カルロス矢吹著 双葉社 2035円
一心不乱にバットを振っていたのは、子どもの付き添いで来た父親のほうだった。津波被害から3年後、「気仙沼フェニックスバッティングセンター」を僕が初めて訪れたのはオープン5日目。平日の昼間なのに店内はごった返していた。
巻頭でも登場する社長の千葉清英さんの言葉が忘れられない。「どんな時だって人は体を動かさないと。娯楽がないと」。津波で家族7人を失った千葉さん親子が未来を託したバッティングセンターに同じ被災者が集まり、被災後初めての運動で笑顔を弾けさせていた。
千葉さんの決意の重さを知るまで、僕は軽い感覚でこの趣味に娯楽として没頭していた。47都道府県のバッティングセンターを巡って「全国制覇や」と思い立ったのは1996年。史上初の偉業を成し遂げても物足りず、気が付けば世界制覇を目指して東奔西走、幾星霜……。