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表面化しづらい男子性被害の実態…「気が付いた時は、服を脱がされてた」とある男性が告白する“中学バレー部時代の消えない記憶”

posted2022/05/15 11:02

 
表面化しづらい男子性被害の実態…「気が付いた時は、服を脱がされてた」とある男性が告白する“中学バレー部時代の消えない記憶”<Number Web> photograph by Getty Images

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島沢優子

島沢優子Yuko Shimazawa

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スポーツ現場のハラスメント事件が絶えない。なかでも「性虐待」は、被害を受けた子どもたちが言い出しにくく、潜在化しやすい。

スポーツライターの島沢優子氏が、そんなスポーツ現場の問題をレポートした『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)から一部を抜粋して紹介する。(全3回の3回目/#1#2から続く)

全裸でランニング…なかなか表に出ない“男子の性被害”

 ここまで女子選手に対する性暴力やセクハラを取り上げてきたが、男子の被害も決して見逃せない。

 大阪市の私立高校野球部コーチだった男(当時31)が2021年9月、部員に性的暴行をしたとして「強制性交等致傷」の疑いで大阪府警に再逮捕された。それ以前にも同じ性的暴行の疑いで逮捕・起訴されていた。男は高校時代に甲子園出場経験があった。被害者は男の大学時代の後輩も含め数十人、およそ10年にわたって大量の被害者がいるとされる。

 スポーツの現場における男性間のセクシャルハラスメントは、一例ある。2005年に中国地方の私立高校野球部で、顧問教諭が部員を全裸でランニングさせている。部内の通称「フルラン」は、顧問が指導の際に暴力をふるったことによって明るみになった。顧問は、暴行と強要の疑いで逮捕・送検され、懲役1年6カ月、執行猶予3年の有罪判決が言い渡されている。

 報道される性暴力やセクハラの被害は、女子がほとんどだ。男子への被害は非常に少ない印象だが、実はこれこそ山口が語ったように「潜在化」しているのではないか。

40代男性コーチ「バレーのビデオを見るから家においで」

 スポーツ現場における男子への性暴力を筆者に実名告白してくれた人がいる。荒川弘(49)。仕事の傍ら、滋賀県で少年サッカーのボランティアコーチを務めている。息子がサッカーを選んだためサッカー指導を始めたが、自身は中学時代バレーボール部だった。

 近所に住む40代の男性が外部コーチを務めていた。そのコーチから、ある日「バレーボールのビデオを見るから家においで」と言われた。2年生の同級生2人、後輩の1年生2人、計5人で行った。6畳の部屋に通されると、テーブルの上にはお菓子とジュースがあった。

「おいしいよ。みんな、これ飲んで」

 だが、荒川は「何かおかしな雰囲気を感じて」出されたジュースを飲まなかった。そして「僕、用事があるから」と言ってすぐに帰った。荒川の様子を見て何か感じたのか、同級生ひとりも続いてコーチの家を後にした。

「今でもなぜ飲まずに帰ったのかはわからないのですが、とにかく必死に走って帰りました」

【次ページ】 同級生に後日「どうだった?」と声をかけた

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