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ソダシの気性は「ゴールドシップより荒いかも」…じつは気難しい“純白のアイドル”と吉田隼人がヴィクトリアマイルで狙う逆襲
text by
太田尚樹(日刊スポーツ)Naoki Ota
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/05/14 17:02
4月上旬に放牧先から帰厩したソダシ。吉田隼人騎手を乗せ、今浪隆利厩務員に引かれて調教へ向かう
その走りは想像をはるかに超えた。父クロフネを含めダート向きの血統だが、調教師の須貝尚介は「決めつけずにいきたい」と初戦に芝を選び、そして勝った。2戦目の札幌2歳ステークスでは白毛馬として史上初の芝重賞勝利を達成。3戦全勝で阪神ジュベナイルフィリーズに挑んだ。
気の強さは根性として生きた。冬曇りでも映える白い馬体はスローモーションのように大きなストライドを伸ばし、残り100mで先頭へ。右後方から迫ってきたのはクリストフ・ルメールとサトノレイナスだ。並ばれる。でも、抜かせない。両耳を絞り、鼻先を突き出す。馬上からも「最後まで分からなかった」という決着は約7cm差。世界初となる白毛のGI馬が誕生した。
かつて金子オーナーの所有馬で味わった強烈な悔しさ
同じ黒、青、黄の勝負服で、ハナ差の激戦――。吉田の脳裏によぎったのは'09年の菊花賞だ。当時25歳。7番人気フォゲッタブルでスリーロールスを追い詰めたが、わずかに及ばずGI初勝利を逃した。大健闘でも敗者はあくまで敗者だ。直後には場内でファンを前に、レース回顧のイベントに出席した。隣では5歳下の浜中俊が喜びを語っていた。残酷なまでの明暗だった。
「ほぼ放心状態でした。浜中に『おめでとう』は言えたんですけど、それとは別にものすごく悔しくて『自分が勝ってたら、ああなってたんだ』って。ハナ差というのが強烈でした。その後、京都駅へは向かったんですけど、カフェでぼーっとして、しばらく帰れなかったです。同じオーナーのソダシで(阪神ジュベナイルフィリーズを)ハナ差で勝って『物語があるね』って言われましたけど、本当に勝っててよかったです。今回もハナ差負けだったら……。あのハナ差が桜花賞にもつながったと思います」
年明け初戦で迎えた桜花賞でもクビ差でサトノレイナスを退けた。古馬を含めたコースレコードを0秒8も更新する1分31秒1の驚異的タイム。史上8頭目となる無敗の戴冠だった。走るたびに競馬史を塗り替える。ぬいぐるみや写真集が発売され、活躍はNHKのニュースでも報じられた。