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ソダシの気性は「ゴールドシップより荒いかも」…じつは気難しい“純白のアイドル”と吉田隼人がヴィクトリアマイルで狙う逆襲
text by
太田尚樹(日刊スポーツ)Naoki Ota
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/05/14 17:02
4月上旬に放牧先から帰厩したソダシ。吉田隼人騎手を乗せ、今浪隆利厩務員に引かれて調教へ向かう
「走れなくなっちゃうかも…」相次ぐ大敗で苦悩
だが、白星ばかりを積み重ねてきたヒロインにも、土がつく日は訪れた。2冠制覇をかけたオークスは8着。単勝1.9倍の圧倒的支持を受けたが、6戦目で初黒星を喫した。続く札幌記念で古馬のGIウイナー3頭を撃破して、再び波に乗るかに見えたが、秋華賞で10着、初のダートに挑んだチャンピオンズカップでも12着。相次ぐ大敗は体調や能力が原因とは思えなかった。
心が折れてしまったのか。だとしたら“再起不能”に陥りかねない。苦悩した。
「秋華賞は調教の具合も良くて『今回は負けないだろう』って自信がありました。でも、全然走ってくれなくて……。ゲートで歯をぶつけただけじゃないと思います。距離が長くて負けたにしろ、3コーナーから動けないのはありえないですよ。なぜか分からない。あの負けはダメな負け方でした。調教は抜群にいいのに、競馬で走れないっていうのが一番良くない。チャンピオンズカップでも追い打ちをかけるように惨敗して『このまま走れなくなっちゃうかもしれないな』というのはありました」
気分良く走れれば、牝馬の中では負けない
危機感を募らせて臨んだ今年初戦はフェブラリーステークスだった。須貝は「芝やダート、距離も含め、最もソダシのパフォーマンスが出せる条件を考えた」と説明。気持ちを切らさず走れるであろうマイル戦に活路を求めた。結果は3着。それでも吉田には「ホッとしました」という安堵もあった。最後まで諦めず走り抜いたからだ。
「牝馬で走るのが嫌になったら、また走る方向へもっていくのは難しいです。でも、フェブラリーステークスはそうじゃなくて、直線でまた頑張っての3着で、ソダシらしさを出してくれました。本来のパフォーマンスを出せるのがマイル。『マイル以下でもいいかな』と思うぐらいのスピードなので。オーナーや厩舎、牧場のためにも、もうひと花咲かせてあげたいです。気分良く走れれば、牝馬の中では負けないぐらいの力があると思います」
精神状態が勝敗を左右する。それは騎手とて同じだ。ソダシに乗れば、常にカメラを向けられ、重圧にもつきまとわれる。
「すごい経験をしてますよね。アイドルホースに乗せてもらってるありがたみもありますし『負けたらやばい』と思いながら乗ってます。毎回、プレッシャーです」