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「もっと色々な選択肢があっていい」“箱根駅伝偏重”に一石を投じた林田洋翔20歳(三菱重工)が「高卒即実業団」から見据える世界の頂 

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小堀隆司

小堀隆司Takashi Kohori

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posted2022/05/03 17:02

「もっと色々な選択肢があっていい」“箱根駅伝偏重”に一石を投じた林田洋翔20歳(三菱重工)が「高卒即実業団」から見据える世界の頂<Number Web> photograph by AFLO

2月13日、全日本実業団ハーフマラソンで優勝した三菱重工の林田洋翔。日本歴代8位タイの1時間0分38秒という好記録をマークした

「アイツは早熟だって、それはずっと言われてきました。ネットは匿名だから、ひどいことも書かれるじゃないですか。『林田はもう終わった』とか、『ただのタイム番長』とか。そういうのを目にするたびに、『いまに見てろよ』って思っていましたね(笑)」

有力大学のスカウトを固辞「さらに厳しい環境に」

 結局、目標としていた全国高校駅伝(都大路)には3年間で一度も出場を果たせなかった。本当に申し訳なく思ったのは、高校に勧誘してくれた先生に対してだった。

「最後の大会で負けて、(瓊浦高校の)山川(貴広)先生に『すまない』って言われたんですよ。自分の方こそ申し訳なかったです。『先生を都大路に連れて行く』『インターハイで優勝する』って宣言したのに、なにも達成できなくて……。なんとか優勝監督と呼ばせたかったんですけど、先生は『いやいや、オレの力不足よ』って僕らをフォローしてくれました。その言葉を聞いて、心から『この高校に来てよかった』と思いましたね」

 卒業を控えた林田の元には、大学の陸上関係者が何人も視察に訪れていた。しかしその度に林田は面会を固辞した。進路の希望は「MHPS(三菱重工)一択」で、もしそれが叶わなくても、他の実業団へ進むつもりだった。箱根への興味がまったくないわけではなかったが、それ以上に自身が強くなれると思える環境に早く身を置きたかったのだ。

「高校卒業後の長距離ランナーの進路は関東の有力大学に偏っていますけど、本来はもっと色々な選択肢があっていいと思うんですよ。自分はやっぱり、大学よりもさらに厳しい環境の実業団に行きたかった。箱根を走ったからといって、それがオリンピックに直結するわけではないですし、自分が将来どうなりたいのか、どう競技を楽しみたいのか、という観点で決めていいと思う。

 今、細かい目標は色々とあるんですけど、一番最後に目指すでっかい目標は何かといえば、僕の場合はごく単純に『世界一になること』なんです。それは小さいころから何ひとつブレていません」

【次ページ】 「この世代のトップは譲らねえ」20歳の決意

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