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「生々しい傷が残って…」衝撃の死から1年後、アイルトン・セナから石橋貴明に届いた“約束のヘルメット”「一度も頭を入れたことはありません」
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byGetty Images
posted2022/05/01 11:02
1994年5月1日、サンマリノグランプリでのクラッシュで亡くなったアイルトン・セナ。34歳の若さだった
もらったヘルメットは被れない。
その事故死から1年後、ブラジルにあるセナのお墓参りに行ったホンダのスタッフから、1つの荷物を渡されました。箱の中には、アイルトン・セナ財団からの手紙と、セナが最後の日本GPで使ったヘルメットが入っていました。
ホンダのスタッフは、セナ財団の人にこう頼まれたそうです。
「日本に帰ったら、アイルトン・タカに会いますか? このヘルメットを鈴鹿の後、すぐに渡したかったんだけど、遅くなってしまってごめんなさい。これはタカとの約束だと、セナからちゃんと言われています。だからこれを、タカに渡してください」
セナは『生ダラ』での「鈴鹿で優勝したら、ヘルメットをあげる」という約束を忘れていなかったんです。
今もそのヘルメットは、自宅に大切に保管しています。表面には、小石がぶつかってできた生々しい傷が残っています。何度も被ってみたいとは思ったけど、結局、一度も頭を入れたことはありません。
河田町で初めてセナと会った日から、あまりにも早くて、濃密な2年間だったから、あのサンマリノGPで、僕のF1への思いもストップしてしまった気がします。でも、あのレースの中継で、解説の今宮さんが涙を堪えながら言っていました。
「モータースポーツは続いていく。セナはいませんが、F1は続いていくわけです」
天国のセナもきっと、F1に明るい未来があることを願っているよね。
アイルトン・セナ(Ayrton Senna)
1960年3月21日、ブラジル生まれ。'84年にF1デビューし、モナコGPを6度制覇。3度の世界王者に輝いた。
石橋貴明(Takaaki Ishibashi)
1961年10月22日、東京都生まれ。'80年に木梨憲武と「とんねるず」結成。あらゆるスポーツに造詣が深い。