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《日本女性初のF1ドライバー候補》「これからはJujuが一所懸命レースをやる」野田樹潤16歳が元F1ドライバーの父と交わした12年前の約束

posted2022/05/13 06:00

 
《日本女性初のF1ドライバー候補》「これからはJujuが一所懸命レースをやる」野田樹潤16歳が元F1ドライバーの父と交わした12年前の約束<Number Web> photograph by Masahiro Owari

2006年2月生まれ、弱冠16歳のJuju。3歳でカートに乗り始め、07年には11歳にしてフォーミュラカーにデビューした

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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Masahiro Owari

 F1初開催となったマイアミGPに、日本人の元F1ドライバーの姿があった。野田英樹だ。53歳の野田は、すでに現役を引退。マイアミを訪れていたのは、レーシングドライバーとしてではなく、F1と併催されていたWシリーズに今年から参戦している娘のJujuこと、野田樹潤(16)のサポートを行うためだった。

 Wシリーズは、いずれ女性のF1ドライバーが生まれることを願って、才能ある女性ドライバーを育成することを目的として発足。19年にスタートし、20年は新型コロナの影響で1年間休止していたため、今年で3年目のシーズンを迎える。過去2シーズンでチャンピオンになっているジェイミー・チャドウィックは、F1チームのウイリアムズで開発ドライバーになるチャンスも得た。

 そのWシリーズに、今年日本人としてただひとり参戦しているJujuが初めてカートに乗ったのは、3歳のときだった。ただしそれは、父親が娘に自分と同じ道を歩ませようとしてレールを敷いた訳ではなく、単に子供の遊び道具として誕生日に与えたカートに乗っただけのことだった。

 野田はJujuの姉にも、そして弟にも同じように誕生日にカートをプレゼントしていた。さらに子供たちには夢中になれるものならなんでも良いと、体操、水泳、空手、ダンスなどもやらせていた。その中で、Jujuだけがモータースポーツの世界を目指した。その日のことを、野田はいまでも覚えていると言う。

父の引退レースでの娘の決意

「2010年のル・マン24時間レースに連れて行ったんです。そのレースで自分は現役を引退すると決めていたので、家族を連れて行きました」

 24時間レースは3人のドライバーが交代で運転を担当する。レース終盤、野田が自分が担当する最後のスティントへ行くとき、カートのレースを始めたばかりのJujuにこう言った。

「パパはこれでレースをやめる。これが最後のレースだ」

 すると、Jujuはこう言って野田を送り出したという。

「これからはJujuがレースを一所懸命やるから」

 その後、カートのレースで多くの勝利を挙げたJujuは、当時としては世界最年少の9歳でFIA-F4仕様のフォーミュラマシンを運転し、現役レーサーと遜色ない好タイムで走らせるなど、早くから非凡な才能を発揮。11歳でフォーミュラU17チャレンジカップに参戦し、12歳から参戦したフォーミュラU17のF3マシンクラスの18年、19年シーズンでは、出場したレースで全勝したほどだった。

 そのJujuが今年から活躍の場として選択したのが、Wシリーズ。その開幕戦がF1のマイアミGPのサポートレースとして行われた。

【次ページ】 不完全燃焼に終わった父のF1

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