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「12対1」のいじめ、両親の反対… スターダムで輝く“折れない女”MIRAIを突き動かした「プロレスへの憧れ」《特別グラビア》
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2022/04/27 17:01
岩手県宮古市出身のMIRAIは、少女時代に震災を経験。地元で開催されたチャリティー興行に心を打たれ、プロレスへの憧れを募らせていった
海援隊道場でトレーニングを続けていたが、練習生が減ったこともあって、東京女子プロレスに移った。やがて念願が叶い、東京女子で2019年5月3日にデビューすることができた。当時のリングネームは舞海魅星(まいうみ・みらい)だった。
「東京女子は自分を受け入れてくれました。すごく楽しかったですし、とても感謝しています。でも、試合をしていくうちに、さらにプロレスに対する想いが強くなって。正しい言い方が分からなくて上手く伝えられないんですが、『仲良し』じゃない部分を感じてみたくなったんです。アルバイトをせずに、プロレスだけで食べられるようになりたい。もっと試合をしたい。いろいろ説得はされましたが、自分自身の意志でスターダムへの移籍を決めました」
3月27日の両国国技館大会では、2021年度の「女子プロレス大賞」を受賞した林下詩美とシングルで激突した。
「すごく意識はしていたし、『やるぞ』という気持ちで燃えていた。いつもは試合をしてみて、これがよかった、これがダメだったと振り返るんですが、この日はあまりいいところがなかったかもしれませんね」
国技館での2日連続のシングルマッチ。前日にも試合があった。
「初日の飯田(沙耶)さんとの試合は楽しかったです。お客さんを巻き込めて勝ったし、剛腕世代をアピールできたかな、と思えた。でも次の日、詩美さんと試合してみて、燃えていた分、自分の中で考えていた自分のレベルと、実際のレベルが違い過ぎていたのを痛感しました。『詩美さんはすごいな』と思ったけれど、同時に自分のダメさを感じましたね……。力の差を見せつけられた。もっともっと努力しないと。負けっぱなしじゃ終われないから」
目指すのは「感情を伝えられるレスラー」
MIRAIが目指す理想のプロレスラー像とはどんなものなのだろうか。
「強さと感情ですね。技がすごいのは『技スゲー』で完結してしまう。でも、感情はもっと深いところに響くじゃないですか。自分がそうだったんですけど、『この人が頑張っているから、私も!』とファンが思ってくれるレスラーになりたい。感情を伝えられるレスラーになりたい」
一本気な彼女らしい、じつに率直な答えだった。また、男子と女子のプロレスの違いにも思うところがあるという。
「男子のプロレスをずっと見てきて感じたことは、一つ一つの技を大切にしているということ。女子は全体に技が多すぎる気もします。もちろん、いろんな技を使える選手はすごいと思いますけど……」