Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER

壮絶な親子ゲンカも…荒川の下町育ち・鈴木誠也が母を泣かせた“ボロボロのアンダーシャツ”「やんちゃだけど不良ではなかった」親友が語る素顔 

text by

村瀬秀信

村瀬秀信Hidenobu Murase

PROFILE

photograph byHideki Sugiyama

posted2024/04/12 17:01

壮絶な親子ゲンカも…荒川の下町育ち・鈴木誠也が母を泣かせた“ボロボロのアンダーシャツ”「やんちゃだけど不良ではなかった」親友が語る素顔<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

25年ぶりのリーグ優勝に貢献するなど、2016年に大きな飛躍を遂げた鈴木誠也

 誠也が「ああいう男になりたい」と認めた松村は現在大学4年生になっていた。

「誠也を怒るのは自分の役目でしたが、誠也は怒られても不貞腐れることなく、ちゃんと聞いてくれましたし、練習が終わってから『今日はごめん。ちゃんとやるわ』とメールが来ることもありました。まぁ、誠也は人を見てますからね。自分の顔色を見て怒っていると判断した時だけだと思いますけど(笑)」

 荒川の誠也と足立の健。後に荒川シニア史上最高の選手とキャプテンと呼ばれる2人が、親友以上の兄弟のような関係になるのは時間の問題だった。

『健ちゃん家の家族になっていい?』

「自分の家にもしょっちゅう泊まりに来ていましたし、うちの父も実の子供のように誠也を可愛がっていましたからね。『こいつは今にすごい選手になる』って、サインを書かせたり、自分のおじいちゃん家に連れて行ったり。そういえば、中学2年の時に誠也から『健ちゃん家の家族になっていい?』と聞かれたんです。『いいよ』って答えたら本気になっちゃって、荷物まとめて家に来たんですよ。どうしたの?って聞いたら『お父さんにいいって言われた』って。純粋だから本気に考えてしまうんですよ。可愛いというか、天然というか……」

 実に微笑ましい逸話ではあるが、その頃の鈴木家は京成線の耐震工事の影響で店の立ち退きを余儀なくされ、家計は逼迫していた。父・宗人は子供でも何事も包み隠さず話すという教育方針の下、苦しい状況を子供たちに伝えると、それまでわがままだった誠也が、アンダーシャツがボロボロになっても黙って使い続け、母を泣かせたほど、急激に大人になっていったという。

【次ページ】 「大丈夫、絶対打つ」約束のセンターオーバー

BACK 1 2 3 4 NEXT
#鈴木誠也
#シカゴ・カブス
#広島東洋カープ
#二松学舎大附属高校

プロ野球の前後の記事

ページトップ