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鈴木誠也18歳、父から銭湯で「広島の人間になれ」東京下町育ちの少年はなぜカープで愛された?「初優勝後に鳴った深夜2時の電話」
posted2024/04/12 17:02
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph by
Sankei Shimbun
鈴木誠也の原点に迫ったルポ『鈴木誠也が“神る”まで。』の第2回(初出:Sports Graphic Number911号/2016年9月23日売)。東京・町屋で育った少年がプロ野球選手として歩みを始めた地は、どこか故郷を思わせる広島の街だった。 ※肩書きや年齢などはすべて初出時のまま
2012年10月。鈴木誠也はドラフト2位で広島東洋カープに指名される。
「すぐに電話が掛かって来て『2位だよ2位、ヤベエよ、これから野村(謙二郎)監督と会うんだけどどうすりゃいいんだよ』って。僕らは指名確実だと思っていたけど本人だけは、指名されないと思っていたみたいで(笑)」(荒川シニア時代のチームメイト・松村健さん)
「誠也、おまえは広島の人間になれ」
子供の頃から夢に見たプロ野球。その舞台となる広島の地にはじめて降りた際、誠也は「町屋に似ている」という感慨を得た。
町の中心には路面電車が走り、いくつもの川が流れている。街の規模こそ違うものの、人情に溢れ野球が好きな人たちがいる。入団会見のため家族で広島を訪れた夜、誠也は父と共に近くの銭湯に出かけた。湯船で肩を並べていると、潜水してきた小さな子供が2人の間から突然顔を出した。
「お兄ちゃん、遊んでよ」
突然の出来事に「東京でこんなことする子供はいないよ」と誠也は泡を食ったが、いつの間にか子供たちと一緒に遊んでいた。
そんな誠也に、父はこんな言葉を伝えた。
「誠也、おまえは広島の人間になれ」