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マスターズ制覇のシェフラー(25歳)が真っ先に「ヒデキ」の名を口にした理由…オーガスタで語り継がれる“陰の立役者たち”
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byKoji Aoki/AFLO SPORT
posted2022/04/13 11:01
前年王者・松山英樹からグリーンジャケットを受け取るスコッティ・シェフラー(25歳)
夫が試合前に緊張やプレッシャーで泣いたのは、その朝が「初めてだった」とメレディスは言う。
しかし、そこから先の彼女の対応が素晴らしかった。2人はともに敬虔なクリスチャンで、何かを考えるとき、何かを決めるときは、必ず「God」に教えを乞う。
だから、人生で大事な場面となったこのときも、メレディスはシェフラーにこう語りかけたそうだ。
「まだ勝つ準備ができていないだなんて、誰に向かって言っているの?それを言う相手は、妻ではなく、神でしょ? だって、運命をコントロールし、アナタを導いているのは神でしょ? その神が『今日はアナタの日』と決めているのなら、今日はアナタの日になる」
もしも緊張して大崩れして82を叩いたら、「それはそれで人生の糧にすればいいし、そうするのがアナタの人生にとってベストなのだと、すでに神は考えてくれている。そう定めてくれている」と妻は夫に説いて聞かせた。
そんなメレディスの言葉を聞いているうちに、シェフラーの心は鎮まり、戦う準備ができたという。
「家(宿舎)を出るまでの時間が一番長く感じられた。その時間が一番長くてタフだった。でも、メレディスと話した後、ひとたび家を出て、コースに入ったら、心が整った」
それでも、1番ティではシェフラーは「少し震えていた」と、キャディのスコットは振り返った。持って出た3打のリードは出だしの2ホールで2打差へ、1打差へと縮められた。
「でも、3番のチップイン・バーディーでスコッティは完全に自分を取り戻した。そこから先は、いつものように、前進あるのみになった」
相棒キャディも、妻も、手に取るようにシェフラーの心を感じ、我がことのように、いやいや、我がこと以上に支え続けてくれた。
それが、シェフラーの最大の勝因となったこと、彼の勝利が「チームの勝利だった」というこの物語は、また一つ、マスターズの歴史に刻まれ、後世に語り継がれる。
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