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「いつ解雇されるか分からない恐怖心」「何回も何日も何時間も、繰り返して」パイレーツ筒香嘉智の生き方に大きな一石を投じた“マイナー時代の苦闘”
posted2022/04/09 11:02
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Getty Images
メジャーリーグは労使交渉のもつれで予定よりも1週間遅れの4月8日(現地時間7日)、全米各地で一斉に開幕した。
その中で昨年は開幕のタンパベイ・レイズからロサンゼルス・ドジャース、3Aオクラホマシティー、そしてピッツバーグ・パイレーツと1年間で4球団を渡り歩いた筒香嘉智外野手は、新たに1年契約を結び直したパイレーツで2022年のスタートを切った。その開幕に合わせて筒香を追いかけたドキュメンタリー映像「Road to L.A.」が動画サイトVIMEOで公開、販売開始されている。
「何百回に1回、起こることのためにその準備をしている」
いきなりこんな筒香の語りから始まるドキュメンタリーは、一気に見るものを引き込んでいく。
なぜ彼はいつもあえて困難な道を選ぶのか?
そこで語られるのは筒香の野球への向き合い方、自分との戦い方だった。
「その瞬間というのは自分で決められない。たまに『これや』と思うことがあって、うまくいくことがある。それ待ちになる。でも自分からそれをやっていくから、それ(『これや』と思うもの)が訪れるわけで、それ待ちになったら、一生来ないですよ」
これまでも筒香を取材していて、いつも思うのはその愚直なまでの自分への向き合い方だった。なぜ彼がこうまで不器用に見える生き方をするのか? なぜ彼はいつもあえて困難な道を選ぶのか?
開幕前にも改めてそう思ったのは、サンケイスポーツに掲載されたインタビューを読んだときだ。
そこで筒香は昨オフにパイレーツから3年契約のオファーを受けながら、あえて1年契約を自ら申し出た理由をこう語っていた。
「決して大きい契約、複数年が“逃げている”という意味ではない。去年、マイナーを経験し、自分の弱さを痛感したときに、もう一回、勝負を本気でしないといけない、と。それぐらいの気持ちじゃないと。ちょっとでもぬるい考えがあれば、もう通用しないと思いました」
背景にあったのが昨年のオクラホマシティーでの経験だったと語る。