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7年前、大谷翔平に栗山監督が激怒した理由…“開幕前の調整”をめぐって「アイツはバカ野郎なんだよ」「説明する必要はないかな、と」
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph byKYODO
posted2022/04/08 06:00
日本で初めて開幕投手を務めた2015年、知略に長けた日本ハム・栗山英樹監督と、底知れぬ大谷翔平20歳のせめぎ合いがあった――
最初のイニングはワインドアップで投げて、次のイニングでは先頭バッターからセットポジションで投げた。大谷は「どっちもやろうと思っていた」と予定通りだったことを強調したが、栗山監督の目にはそんな大谷がもどかしく映った。
「試していいよ。セットでも振りかぶるのでも、こういうことをやってみたいというのは大事。でも実戦形式なんだから、こうしたい、これをやりたいという向き合いが自分じゃなくて、相手をやっつけたい、絶対に負けないというベースでなくちゃ……アイツ、開幕をやりたいと言ってるんでしょ? だったら、それを自分で摑んでくれということ。今日が紅白戦だという気持ちが少しでもあるなら考え違い。実績のある選手ならともかく、まだその段階ではない」
最後には大谷の開幕投手について、栗山監督は「もう一回、白紙だな、すべて」と言った。期待の裏返し、愛のムチ、親心ゆえといった想いから、大谷には敢えて厳しい言葉を発することが多い指揮官ではあるが、この日ばかりはそれだけではない苛立ちや歯痒さを感じさせた。
いったい何を焦っているのか。
まだ第2クールじゃないか、初めての実戦とはいえ紅白戦、そんなにムキになることはない……大谷でなくとも、そう感じるかもしれない。しかし、この指揮官の感情の爆発には、じつは伏線がある。
栗山監督の怒りには伏線があった
年明け早々のことだ。
栗山監督はこんなふうに言っていた。
「だからアイツはバカ野郎なんだよ」
その言葉にも、いつもの冗談交じりのニュアンスはなく、むしろ怒気を含んでいるように聞こえた。栗山監督は、年末に大谷が別のインタビューで話していた内容を伝え聞いて、怒っていたのである。
それは、大谷のこんな言葉だった。