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「2人の関係は理解しているが…」筒香嘉智の“横浜高校の同級生”が、筒香が移籍してもレイズに残って“大活躍”しているワケ
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by本人提供
posted2022/04/01 17:03
メジャーリーグ・アシスタントとしてレイズで働く佐野誓耶さん。横浜高校の同級生・筒香嘉智とともにレイズに来たが、筒香が移籍しても佐野さんはチームに残った
「2人の関係は理解しているけど……」
筒香のDFAが決まった直後に、佐野はキャッシュ監督に呼ばれてこう言われた。
「2人の関係は理解しているけど、もしチームに残ってくれたら私たちは嬉しい」
まだこの時点で筒香の新しい移籍先は決まっておらず、この先どうなるかのメドは全く立っていなかった。
「誓耶のことを考えたら残った方がいいと思う」
筒香に相談すると、残留を勧めてくれた。
「でも、彼のおかげでレイズに入れたんだし、彼について行くというのが、僕の最初の結論でした。そのことを伝えたらキャッシュ監督も、筒香選手の移籍先が決まったら、僕が契約できるように動く準備もして待っていてくれたんです。でも、そこでビザの問題が出てきてしまった……」
佐野の就労ビザはレイズで働くためのものだった
佐野の就労ビザはレイズで働くためのもので、新しい球団に移籍するとなると、改めてその球団で働くためのビザを取得し直したり、様々な手続きと時間が必要になってくる。そもそも移籍先の球団が、レイズと同じように球団職員として佐野と契約を結んでくれるかどうかも分からない。そうなると就労ビザを取得すること自体が難しくなってしまう。
そうして散々悩んだ末に、佐野は筒香と離れて、レイズに残留する決断をしたのだった。
今季もレイズの一員として佐野は、キャンプ地のフロリダ州ポートシャーロットにあるキャンプ施設で開幕を待つ。
レイズはここ数年、選手の入れ替わりが多く新陳代謝が激しいが、その中から有望な若い選手が出てきて、それがチームの活力ともなっている。
そんな若手有望株の一人が2020年のプロスペクトランクでMLB全体の1位となり、昨年6月にメジャー昇格を果たした21歳のワンダー・フランコ内野手だ。
「彼を見ていて驚くのは、ベンチでもロッカーでもバットをずっと握っているんです。とにかく野球が好きで、好きで仕方がない。だからものすごい練習熱心で、ケージが5時に開くと言っていても、3時から打ち始めるのはいつもワンダー・フランコです。しかもまだ21歳なのに、練習で妥協しない。一緒に練習をしていても、納得するまで練習は終わらないのが彼ですね」
いつものように打撃ケージで打ち込みの手伝いをしていたときだ。フランコが打っていると、次の選手がケージの入り口付近で待っている。多くの選手は気を使って、次の選手が来たら適当なところで練習を打ち切って場所を譲るが、フランコは違う。