プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「2人の関係は理解しているが…」筒香嘉智の“横浜高校の同級生”が、筒香が移籍してもレイズに残って“大活躍”しているワケ
posted2022/04/01 17:03
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
本人提供
「セイヤ!」
ノソノソっとベンチ裏にやってきた男からこう声がかかると、佐野誓耶(せいや)は打撃ケージの中にネットを置いてボールを掴んだ。
男が打席に入る。その真正面のネットの横からボールをトスする。球を打つのは、2021年のシーズン途中にタンパベイ・レイズに移籍してきたネルソン・クルーズ外野手だ。
「メジャーでは試合中にベンチ裏に来てケージで打撃練習をするバッターは多いですね。代打要員として待機している選手はもちろんですけど、試合に出場している選手でも、守備が終わって自分の打順が回ってこないときにベンチ裏のケージにきて、バッティング練習をすることが結構あります。自分の打席の内容、結果に対して、フォームの確認やその日の対応を考えて修正しに来るんですね」
佐野は言う。
メジャーリーグ・アシスタントという肩書き
そこで打撃マシンの球入れをしたり、トスを上げたり、練習の手伝いをするのがメジャーリーグ・アシスタントという肩書きを持つ佐野の仕事の1つだった。試合中でもひっきりなしにケージでは打撃音が鳴り響き、佐野は休む間もなくそうした選手の要求に応えて動き回る。
昨シーズン、そうして佐野を頼りにする常連選手の1人が、クルーズだったのである。
「彼は指名打者なので、打席がどんな結果でも時間があるときには必ずベンチ裏に来て、ケージでちょっとだけでも打って戻っていきますね。練習のルーティンは決まっていました。フロントティー(正面ティー)だけ。いつも同じ場所、同じトスを僕が投げて、それを打つことで自分の感覚を確かめているんだと思います。トス打撃でも打球はハンパなく速い。飛んできたら、避けきれないくらいに速いです」