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「今季の大谷翔平からは余裕すら感じる」 毎年キャンプを取材・現地記者が痛感した“明らかな違い”とは? フリー打撃成績も徹底比較
text by
斎藤庸裕Nobuhiro Saito
photograph byGetty Images
posted2022/03/26 17:04
3月21日、ロイヤルズとのオープン戦で今季実戦初登板となった大谷翔平
練習中には大きな笑い声も
元々、笑顔も多く、同僚と楽しげに話す姿はよく見られるが、今年は特に、練習中に大きな笑い声が響く。3月16日のライブBP(実戦形式の投球練習)では、先頭打者で左打者のウォンと対戦。いきなり球足の早い投手正面へのライナーを打たれたが、素早い動きで捕球した。周りは一瞬、ざわめいたが、大谷は満面の笑みを見せた。体の状態もよく、万全で臨めるから、練習から楽しめるのだろう。前日のブルペン入り後には、「フィジカルも含めて、去年の始めより良い状態で臨めていると思う。少し開幕まで急ぎ足、駆け足である部分はあると思いますけど、その中で出来ることをやりたい」と話していた。
1年目はメジャーで初のキャンプだったため、時間の使い方も手探りだった。2年目は手術した右肘のリハビリに費やし、3年目も前年に受けた左膝の手術明けで万全ではなかった。さらに、その年は新型コロナウイルスの感染拡大で中断。不可抗力にも直面した。4年目でようやく、状態が元通りになり、フィジカル強化で体つきが一回りも二回りも大きくなった。結果的に、その年のシーズンで二刀流として大活躍。今や、体に不安もなく、投打での調整や時間の使い方も確立されている。状態の良さと5年目の慣れが、メンタル面でも好影響を与えているように見える。
これまでとの“明らかな違い”とは?
練習だけでなく、実戦でもしかりだ。3月21日、ロイヤルズとのオープン戦に今季実戦初登板。2回 1/3 を投げ、3安打1失点の結果だったが、投球テーマを明確に定め、「ストライクを取ること」を重視した。50球のうち、33球がストライクでストライク率は66%。前年のオープン戦やシーズン序盤のように、制球に苦しむ姿は見られない。「楽しく投げられたので、不安なく行けるということが、まず1つ良かったと思います」。特に状態を気にすることもない。これまでとの明らかな違いだ。
「手術があったり、痛いところがあったりとか、そうなってくるとなかなか試合には集中できなかったりするので。そういう意味ではいい1試合目だったかなと思います」
打席では2年目から既に風格が出始めていたが、投手としては右肘のリハビリもあり、徐々に地位を確立。そして、5年目で開幕投手に指名された。打者同様に、自信や風格がマウンド上でも漂い始めている。今季オープン戦の初登板5日前にライブBPで対戦し、昨季後半戦で10本塁打を放った同僚メイフィールドは「去年よりずっとリラックスしているし、自信があるように見えるね」と証言。ミナシアンGMも「彼のことは心配していない」と絶対的な信頼を寄せていた。故障やリハビリ、その後の制球難を1歩1歩、乗り越えてきたからこそ投手大谷はたくましく成長した。