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“同じ年に生まれた2人の天才”浅田真央とキムヨナ…フィギュア史に残るライバル物語「真央はいつも笑顔で、ヨナは真剣な表情だった」
text by
タチアナ・フレイドTatjana Flade
photograph byGetty Images
posted2022/03/23 20:00
同じ年の9月生まれの浅田真央とキムヨナ。稀有な才能を持つ2人のライバル史とは
バンクーバー五輪で圧勝したのはヨナだった
五輪本番、真央はSPで1回、フリーで2回の3アクセルを成功させ銀メダルを獲得した。シーズン初めよりもずっと良い演技を見せたが、やはりミスに失望を隠せずにいた。
バンクーバー五輪で圧勝したのはヨナだった。真央に23.06ポイントもの大差をつけ、優勝したのである。演技を終えると、ヨナは五輪王者になるという子供時代の夢がかなえられたことを悟って涙を拭った。演技直後に泣いたのは、生まれて初めてだったという。
圧倒的な強さを見せて金メダルを獲得したヨナは、翌シーズンから休養を宣言。世界が注目したトップスケーター対決は、'11年の世界選手権を最後に1年以上の間、見ることができなくなった。
真央とヨナが最後に、そして久しぶりに、顔を合わせたのは'13年3月にカナダのロンドンで開催された世界選手権だった。
GPシリーズには出場せずに、小さな国際大会に一度出たきりだったヨナは、自信たっぷりの滑りを見せ、2位に20ポイント以上の点差で2度目の世界タイトルを手にした。
対する真央も、徐々に調子を取り戻してきている最中で、ソチ五輪の会場となるリンクで行なわれたGPファイナルで優勝。世界選手権ではミスをしてしまったものの3位に入り、五輪後から続くスランプを乗り越え3年ぶりに表彰台に返り咲いた。
稀有な才能を持つ2人のライバル史
そして再び巡ってきた五輪シーズン――。
真央は全日本選手権では不調な滑りで3位に終わり、ヨナは1月の韓国選手権で圧勝したものの、この大会にはプレッシャーを与えるようなライバルは出場していない。どちらも、実力を出し切ってはいない状態と言える。
ソチ五輪は、おそらく真央とヨナの最後の戦いになるだろう。どんな結果になるのかは、まだ誰にもわからない。そして経験豊かな2人だからこそ、何が起きてもおかしくはない。
だが、たとえどのような結果になったとしても、浅田真央とキム・ヨナの2人が見せてくれた素晴らしい試合の数々は、フィギュアスケートの歴史をより豊かなものにしてくれた。14歳だった2人が顔を合わせてから、既に10年の歳月が流れようとしている。
稀有な才能を持つ2人のライバル史。一体、誰が忘れることなどできるだろう?