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センバツを見守る“23歳スカウト”…山本由伸と同期、プロ3年で戦力外「将来のキャプテン候補」だった男が選んだ第二の野球人生
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNoriko Yonemushi
posted2022/03/23 11:06
昨シーズン限りで現役を引退し、オリックスのスカウトに転向した岡崎大輔(23歳)
野球に関わる仕事に限らず、岡崎はどんな仕事でも重宝される人材だろう。牧田もこう語る。
「人当たりもいいし、アンテナも高いし、視野も広い。キャプテンシーもある。どこであっても責任感を持って、任されたことをほぼ完璧にやってくれると思います。その中で、ドラフトでのチーム作りと育成という、今一番球団が大事にしてくれているところに、岡崎を置いてくれたのはありがたいですね。いろんな部署との話し合いがあって、みんなが欲しいと言ってくれた中で最終的にそうなったのかなと思います。
若いので勉強しながら、失敗もいっぱいしながら、経験値を上げていってくれれば。現役プレーヤーとして悔しい思いをたくさんしてきたと思うんですけど、『プロの世界は甘くない』ということをいっぱい感じてきた人のほうが、スカウトには適任なのかなという僕の勝手な思いがあります」
牧田は、岡崎の入団後も密に連絡を取り、その挫折と苦悩を間近で見てきた。
「彼は1年目から一軍に上がって、大谷選手と対戦し、次期レギュラーと言われていた。それなりにいい思いもしてから、伸び悩んだので……。(3年目のオフに)育成になった時には、相当な思いがあったと思います。僕も連絡を取って、『とにかくユニフォームを着続けろ。その先には必ず光がある』と、懇々と話をしました。
当時は悔しいだけじゃなく、ドラフト3位という順位で入って、3年で、21歳でクビを切られるんだという恥ずかしさみたいなものもあったと思います。地元に帰れないとか、でも育成契約って何だよ、3桁の背番号って何なんだよ、というような思いは、口には出さなかったけれど、たぶんあったんじゃないか。彼にしかわからない葛藤を、最後は自分で乗り越えて、3桁の背番号を1年半着続け、最後の夏に支配下に上げてもらった。そこへの感謝とやりきった感が、いいかたちで出てくれての今の表情なのかなと信じたいですね。彼の中で(育成契約後の)700日を本当にいい時間にしてくれたのかなと思います」
岡崎が明かした牧田さんへの感謝
入団後も頻繁に連絡をくれた牧田に、岡崎は感謝する。
「プロ野球選手って、すごく孤独なんです。1人で不安になることもある。そんな中、牧田さんはいつも連絡をくれて、『最近どお? 体調大丈夫?』とすごく気遣ってくれました。そういうふうに見てくれている人がいるんだなと思うと、選手ってすごく嬉しいんです。二軍生活が長くても、『あ、牧田さん、オレのこと見てくれてるんだな』って。やっぱりそういうスカウトになりたいですよね」