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センバツを見守る“23歳スカウト”…山本由伸と同期、プロ3年で戦力外「将来のキャプテン候補」だった男が選んだ第二の野球人生
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNoriko Yonemushi
posted2022/03/23 11:06
昨シーズン限りで現役を引退し、オリックスのスカウトに転向した岡崎大輔(23歳)
岡崎は16年秋のドラフトでオリックスに3位で指名された。その年のドラフトは、1位山岡泰輔、2位黒木優太、4位は今や日本のエースとなった山本由伸、6位山崎颯一郎など、そうそうたる顔ぶれだった。
そんな中で3位指名された岡崎への期待ももちろん大きかった。
入団まもない岡崎に初めて取材させてもらった時、当時の仁藤拓馬広報に「将来のキャプテンです」と紹介されたほど、人間力を評価されていた。実際、まだ高校生とは思えないほど受け答えが流暢で、仁藤広報の言葉にも頷けた。プレーでも、走攻守揃った内野手として、いずれは宗佑磨との二遊間でセンターラインを、と期待されていた。
一軍デビュー戦が大谷翔平
1年目から一軍デビューを果たし、5試合に出場。一軍で初めて対戦した投手が、当時日本ハムにいた大谷翔平(エンゼルス)だった。
2017年10月4日。大谷の日本ラスト登板となったその日、9番ショートで初先発した岡崎は、三振、センターフライ、ファーストゴロのデビューだった。のちに、興奮混じりにこう語った。
「めちゃくちゃテンション上がりました。ずっとテレビで見ていた選手なので。衝撃的でしたね。こーんなに速いんだ、こーんなに変化球って曲がるんだって。よくファームで『甘い球を1球で仕留めろ』と言われていましたが、その意味を痛感しました。ああいう投手になると甘いボールが1試合に1、2球しかありませんから」
その中でも第2打席のセンターフライは、ストレートを捉えた強い打球だった。
「自分でもびっくりしました。当たんないんじゃないかとちょっと思ってたんですけど、あの打球は手応えがあって、打った瞬間、『あ、これ初ヒットかな』と思ったぐらい。初ヒットが大谷翔平さんからだったら、一生語れますよね」と笑っていた。
3日後、同学年の楽天・藤平尚真からプロ初安打を放ち、この年2安打を記録した。だが翌年以降、一軍で出場することはなかった。
プロ3年目のオフに戦力外通告
3年目のオフに戦力外通告を受け、育成契約に。5年目だった昨年8月、支配下に復帰を果たすが、11月3日に戦力外通告を受けた。
同い年の山本がチームの大黒柱となり、山崎颯も成長著しく、チームが25年ぶりの優勝に沸く中、岡崎はひっそりとユニフォームを脱いだ。
支配下登録を勝ち取り、これからというところでの戦力外通告。さぞ無念だったのではと想像したが、今年2月に宮崎キャンプで会った岡崎は、晴れやかな表情で言った。
「よくそう言われるんですけど、僕の中ではやり切った感がありました。オレはもうおそらくこの舞台では……という思いがあったから、クビって言われた時に、『おっし! 次行こ!』という気持ちになれた。現役への未練はあまりなく、次のステップにもう向いていたので、トライアウトを受けようとも思いませんでした。チームに貢献できる最善の方法を考えると、現役じゃなく、必要としてくれるところで頑張ろうと」
福良淳一ゼネラルマネージャーから、「スカウトをやってくれるか?」と打診され、「承知いたしました。ぜひよろしくお願いします」と返答した。
「めちゃめちゃ嬉しかったですね。スカウトは絶対いい仕事だと思っていたので、すごくやりたい仕事でした。23歳というこんな歳でやれる人もいないと思うし、そういうチャンスをいただけたことに対して、しっかり恩返ししたいなと思います」