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投手・大谷翔平はリアリスト? 岡島秀樹が驚いた3-0からの四球「クローザーの発想に近い。大谷君の割り切り方は、斬新ですね」  

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byGetty Images

posted2022/03/21 11:03

投手・大谷翔平はリアリスト? 岡島秀樹が驚いた3-0からの四球「クローザーの発想に近い。大谷君の割り切り方は、斬新ですね」 <Number Web> photograph by Getty Images

昨季は23試合に先発し、9勝2敗、防御率3.18、奪三振156、与四球44の成績を残した大谷翔平

 もうひとつ、後半戦の安定を生んだのは、カット気味のフォーシームです。大谷君のフォーシームは、しっかりと指にかかるとカット気味になる。この球種は、ずば抜けて威力がありました。155キロほどの球がカットしてきたら、どんな打者でも対応は難しいですよ。

 芯をずらしてファウルにさせてカウントを稼ぐことも出来るし、ゴロアウトの可能性も高まります。球数を抑えるという意味で、大きな武器になったと思いますが、半面、指にしっかりとかかることで、指先にマメができやすいのかなとも推測します。

驚かされた“四球を恐れない”発想

 球種に加えて、指摘しておきたいのが、彼の“発想”です。大谷君の特徴として挙げられるのが、ストレートの四球を出すのを躊躇わないことなんです。僕が解説している時に、ボールスリーになるじゃないですか。「これ、このままストレートの四球ですね」と言うと、本当にそうなるんです。

 おそらく、3-0からカウントを戻したとしても、そこから四球になるかもしれない。それだったら、4球で歩かせた方が球数を抑えられる。それで次の打者を1球でダブルプレーに取れたとしたら、5球でツーアウト。こちらの方が効率がいいと割り切ったあたり、リアリストって感じがしますよね。

 こうした発想は――僕はスマートだと思いますが――先発じゃなくて、どちらかといえばクローザーに近いんです。クローザーは相手打者との力関係を考えながら、「ここは歩かせても、次の打者を打ち取ればいい」という発想で1イニングをマネージメントします。だから、四球を出しても構わないんですが、大谷君は先発ですからね。ふつう、ストレートの四球は見栄えが悪いとか考えてしまうものなんですよ。大谷君の割り切り方は、斬新ですね。

 大谷君には本格派のイメージが強いと思いますが、こうした柔軟な発想を持っていることで、これからも投手として成長していく可能性を広げていると思います。

【次ページ】 取り組むべき球種はチェンジアップ?

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