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少年野球で1本4万円もする「飛ぶバット」はアリか? “値段が高すぎ”中学野球では過去に禁止も…「ヒット1本1000円なら悪くない」の声
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph byGetty Images
posted2022/03/19 17:03
少年野球で人気の「飛ぶバット」。1本4~5万円という価格面も批判の対象となっている(※写真はイメージ)
「全日本軟式野球連盟の主催大会で複合バットを禁止したことはありませんが、中体連では使用が禁止になりました。理由のひとつは、打撃の技術の観点から、選手にとってマイナスであること。そして、中学生の部活で持たせるには明らかに高価な商品であるという学校教育上の観点から、使用が禁止されていたようです。ただ、2012年からは全軟連の方向性に合わせ、中学校でも複合バットの使用は可能となっています」(全日本軟式野球連盟)
バットの値段についてミズノ広報は「高機能商品ですので、それに見合った価格設定にしています」と述べたが、山崎氏は平等性の観点から苦言を呈す。
「正直、野球は道具にお金がかかるスポーツですが、バットが4~5万円もするのは、さすがに高すぎる。お金がある家庭だけが使えるという事態になりかねません。飛びやすいバットにはおおむね賛成ですが、それは誰もが使用できるというのが前提の話です。メーカーさんにはもう少し頑張って道具の値段を安くしてもらいたいですね」
「ヒット1本1000円」なら悪くない?
前出の少年野球コーチ・山口氏にも、複合バットの価格について聞いてみた。
「うちの息子に買い与えた複合バットは、3万円のものです。小学校6年のときに買ったので、卒業までに打ったヒットは30本程度。つまり、ヒット1本につき1000円ということ。そう考えると、もっと早く買って長く使ったほうがよかったなと思っていますね」
筆者は小学生時代にビヨンドマックスでホームランを1本だけ打ったことがあるが、ビヨンドマックスがなければあの至福の快感を知ることはなかったはずだ。確かにバット1本の価格として見れば高いが、山口氏の言うように、試合でのヒット1本を1000円で味わえるなら、悪くはないのかもしれない。複合バットを規制するよりも、誰もが複合バットを使える環境づくりに向けた議論のほうが有意義だろう。技術向上はもちろん大切だが、そうした飛ばす楽しさの追求は、野球人口の減少を食い止める一策になるのではないか。
<前編から続く>