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若手の控室スマホも「受け入れないと…」長谷部誠38歳が“異例の5年契約”にサイン “引退後のポスト保証”でも誰も疑問に思わない理由
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2022/03/13 11:03
フランクフルトとの契約を2027年まで延長した長谷部。現役にこだわり続ける一方で、指導者としての感覚も少しずつ身に付けているようだ
現在、ブンデスリーガ2部のフォルトゥナ・デュッセルドルフでプレーするU-21ドイツ代表のアペルカンプ真大が、以前語ってくれたことがある。
「U-19の頃はボールを持ってから考える時間があって、U-23の時も短くはなったけど、まだ考えることができた。だけど、プロになるとまったくない。ボールをもらう前に何をすべきか周りを見て判断しておかないと、すぐに潰されてしまう」
長谷部の経験は若手にとって大きな助けに
「インテンシティ」という言葉は「プレー強度」と解釈されがちだ。しかし、それはハイスピードで何度もピッチ上を行き来したり、プレスをかけ続けたりというフィジカル的な側面においてだけではない。
ものすごいスピードで周りが動き、まったく考える時間がない空間でも、冷静さを失わず、確かな視野を確保して、ボールを落ち着けたり、攻撃を組み立てたりするには、メンタル的要素も備わっていなければならない。
世界トップレベルのドイツ1部で、強豪を相手にしても潰されることなく、慌てることなく、味方を生かすプレーができるというのは、並外れたレベルである。
長谷部は自分のプレーだけに止まらず、周囲の状況を認知し、仲間にコーチングをしてくれるからチームは助かる。フランクフルトのマルクス・クレッシェGMは「マコトは若手選手に声をかけ続けてくれる。彼の持つ経験は若手にとって大きな助けになる。重要なファクターだ」と称賛していた。
指導者講習会への参加がプレーにも好影響
そんな長谷部は、いまなお自身が成長していることを楽しんでいる。ドイツサッカー協会の「プレーヤーズパスウェイ」というプログラムの一環で指導者ライセンスの取得にも挑戦しているのだが、そこで学んだことはプレーヤーとしての自分にも生きていることを明かしてくれた。
「戦術的なサッカーの部分はまだ(講習会で)やっていないんですが、練習を作るとか、練習時間のオーガナイズはやっています。だから、これまで以上に練習の意図を考えて練習するようになりましたし、あてはめながらできるようになっていると思う。『こういうことを監督が考えているんだ』というのが、今までよりも分かる気がするんです」