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文武両道がイタリアで!? インテル “期待の星” 入団で、両親「高卒資格のサポートは?」 本人「今の若者は自分で考える力がないと…」
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2022/03/07 11:00
イタリアのサッカー界では、中・高校生世代を受け入れるために学習環境を整えるクラブが増えているという
「自分で考える力がないと成功をつかむことは難しい」
聡明なロレンツォ君は自らがミラノでの新しい人生を選んだことで、身の回りの大人の間で1億円近い大金が動いたことを悟った。
それは建前とか綺麗事ではなく、事実でありビジネスだった。規模は小さくとも商売を営む両親の背中を見て育った彼は、周囲の仲間より一足早く世の理に触れ、大人の世界に足を踏み入れる心構えができていた。そのためにサッカーには教育が大事だと訴えていた。
インテルに入団して半年後、インタビューに答えるロレンツォ君の言葉は初々しくも凛々しい。
「一人前のサッカー選手になるためには、自分の頭で考える力を持つことがとても大事だと思っています。今の時代の若者って自分できちんと考える力がないと、サッカーでも人生でも成功をつかむことは難しいと思うんです」
脚で稼ぐプロサッカーの世界では、学歴なんぞ関係ないとばかりに、中卒の人間が国籍を問わずゴロゴロいる。学校や勉強は苦手、大嫌いだったと公言する選手は珍しくないし、無頼の彼らを潔し、天晴とすら思う。彼らのキャリアシートに学歴を書く欄はどこにもない。
だが、かつて名将ジョゼ・モウリーニョはこう喝破した。
「サッカーしか知らない者は、サッカーのことを何もわかっていない」
今季中にトップチームへの招集も
ロレンツォ・ペスケトーラは現在、クリスティアン・キブ監督が指揮するインテルU-19チームの主力の一人として活躍中だ。
2月上旬、プリマベーラ・リーグのミラノ・ダービーで決勝ゴールを決め、同下旬にはユベントス相手に3-0快勝の先制点をアシスト。CLの弟分にあたるUEFAユースリーグでは6試合で3ゴール1アシストと大暴れしている。今後のベンチ状況次第ではスクデット争いを続けるトップチームへの招集も今季中にありうるかもしれない。
もし彼がセリエAデビューを果たしたら、故郷の母校も村もきっと大騒ぎになるだろう。それは保護者と学校、地元クラブの三者がともに育んできた何かが報われ、花を咲かせるときなのだ。