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ネイマールが最も苦しんだ批判「(相手監督が)“ブラジルは、モンスターを育てている”と…」 今では“何の恨みもない”と語るワケ 

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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photograph byTakuya Sugiyama/JMPA

posted2022/02/27 17:00

ネイマールが最も苦しんだ批判「(相手監督が)“ブラジルは、モンスターを育てている”と…」 今では“何の恨みもない”と語るワケ<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama/JMPA

ロシアW杯のネイマール。何かと物議をかもしがちなセレソンのエースだが、18歳の時に心を痛めた言葉があったという

 シモンエスは、当時57歳。ブラジルの強豪クラブ、ジャマイカ代表、ブラジルU-23代表、ポルトガルのクラブなどを率いた経験を持つ老練な指導者だった。

 このコメントは、「モンスター」という言葉が持つ強いインパクトのせいもあって、国内外で大きく報じられた。

名将はネイマールへの“再教育”が必要と訴えた

 シモンエスは、日本とも深いかかわりがある。

 1994年から2000年までジャマイカ代表を指導し、同国史上初めて北中米予選を突破して1998年ワールドカップ(W杯)へ導いた。やはり初出場の日本と同組となったが、初戦でクロアチアに1-3で敗れ、アルゼンチンには0-5の大敗。選手たちが自信を喪失し、意気消沈しているのを見て、「こんな状態で練習をしても意味がない」と割り切り、ディズニーランド・パリへ連れて行った。選手たちは、大喜び。この気分転換が功を奏し、日本戦で2-1の歴史的勝利をあげた。

 もしジャマイカの監督がこの男でなければ、実力では優っていたと思われる日本がW杯初勝利をあげていた公算が強い。

 シモンエスは、2017年に監督業から引退。その後は、プロ監督を指導する「コーチング」の仕事を続けている。

 ブラジルのフットボール界きってのインテリで、教育者のような人柄だ。それゆえ、若きネイマールに強い危機感を覚え、“再教育”の必要性を訴えたのだろう。

 名将がネイマールと彼を取り巻く人々に警告を発してから12年。ネイマールは、2013年にバルセロナへ移籍して活躍した後、2億2200万ユーロ(約293億円)という史上最高の移籍金でパリサンジェルマンへ。ブラジル代表でも攻撃の中心を担い、2014年と2018年のW杯に出場している。

 シモンエスは現在のネイマールについてどう思っているのか――。それを知りたいと考えてインタビューを申し込んだところ、「自分のインスタグラムに、彼へのメッセージを載せたところだ。それを読んでくれ」という返事が返ってきた。

 インスタグラムには、こう書かれていた(概要)。

シモンエスが今なお抱えている後悔とは

 《君が30歳になるということで、数日前、TVグローボ(ブラジルの主要TV)から君について話をしてほしいと頼まれた。しかし、私は丁重にお断わりした。2010年に私が話したことがあまりにも大きく取り上げられてきた、と感じているからだ。

 ただ、君には以下の二つのことを伝えておきたい。

 1)私は、君がモンスターだと断定したのではない。「誰かが君を教育する必要がある」と言ったのであり、君のキャリアを手助けする人たちへの警告だった。

 あのコメントで、実は私も多くの人から批判された。その一方で、同業者(監督)たちからは「勇気を持って、よく言ってくれた」と感謝された。

 2)君は、「あの批判のせいで、僕のキャリアは台無しになっていたかもしれない」と語った。でも、君は周囲の人からの忠告を受け入れた。そのお陰で、現在の君がある。

 実は、私の監督人生の中で、選手に注意を与えなかったためにひどく後悔していることがある。

【次ページ】 トラブルはあれど“有益な警告”だったと言える理由

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