だが、プロ入り後の田中は、もがき苦しむシーズンを過ごし続けた。5年間で一軍29試合に登板し、未勝利。相次ぐ右肩痛や右ヒジ痛に悩まされたとはいえ、手術が必要なほど重症化したわけではなかった。プロ入り後の田中を取材できなかった者としては、頭の中にクエスチョンマークが渦巻いた。

「自信が崩れたところから始まった」

　なにより不思議でしょうがなかったのは、一部メディアから田中は「ガラスのハート」と評されていたことだ。大学時代の自信が底光りした田中はどこへ行ってしまったのだろうか。

　6年ぶりにインタビューする機会を得て、まずはその点をストレートにぶつけてみた。プロ入り前にあった自信は、根底から崩れてしまったのか。そう聞くと、田中はやや低いトーンでこう答えた。

「自信が崩れたところから始まったかもしれないです。技術も体も両方ですね」

　今季からメガネをかけるようになった田中は、インタビューにもメガネ姿で現れた。レンズ越しの表情は、感情がやや読み取りにくい。それでも、田中の短い言葉から深い絶望を味わったことはうかがえた。

　高校時代から何度も右肩痛に悩まされていただけに、コンディションの問題はプロ入り前から予想できた。だが、打者を抑えることに関してここまで苦労するとは予測できなかった。大学時代の田中は、たった1球でモノの違いを感じ取れる圧倒的なストレートを投げていたからだ。

　だが、プロの世界で田中は「スキル全般が足りない」と打ち砕かれた。

「アバウトだと厳しいと感じる場面が多かったです。コントロールも変化球も。投げる以外のスキルも全然ダメで、その連続でした」

「4年目までは絶望していました」

　田中について忘れられない光景がある。2017年2月のソフトバンク春季キャンプ。投手のフィールディング練習で、田中はイージーミスを連発した。入団前から守備を苦手にしていたとはいえ、深刻な状態に見えた。田中はプロ入り前の想像以上に「自分には力が足りない」と痛感したという。

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