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《2016年ドラ1》ソフトバンク田中正義(27)が語る“今の自己評価”「4年目までは絶望していました」「大活躍する要素は僕のなかにある」
posted2022/02/21 11:03
text by
菊地高弘Takahiro Kikuchi
photograph by
Kotaro Tajiri
アマチュア野球選手をインタビューしていて、僭越ながら「この選手はプロに行っても大丈夫だろうな」と予感することがある。今から6年前、創価大のエースだった田中正義をインタビューした際にも同じような印象を抱いた。
プロの世界は性格がいいからといって活躍できるわけではなく、思考力があるからといって成長できるわけでもない。私は田中と接してみて、「自分を見失わない人間なのだろう」と頼もしく感じた。
6年前、田中正義が語っていたこと
田中は当時、自分について書かれた記事をほとんど目に入れないと語った。「見てもプラスにならない」という理由からだ。田中はメディアの評価と自己評価に大きなギャップを感じていた。
「2年生くらいから『ドラ1だ』と評価されていましたけど、いやいや、そんな選手じゃない。自分よりいいピッチャーはいっぱいいるでしょうと思っていました」
2016年のドラフト会議で5球団が田中を1位指名し、ソフトバンクへの入団が決まった。それでも田中は「このままではプロで通用しないのはわかりきっている」と吐き捨てた。
「一番の課題は真っすぐと変化球の腕の振りが違うこと。変化球のコントロールも悪いし、牽制やフィールディングが下手なのもすぐバレるので。プロに行ったらボコボコにされるでしょうね」
言葉だけを聞けばネガティブな発言のオンパレード。だが、その口ぶりは沈んではおらず、むしろ不敵な自信すらも滲んでいた。
田中はドラフト会議当日の会見で、こんな意気込みを語っている。
「『田中が先発だから球場行こうよ』と言ってもらえる投手になりたいです」
この言葉について触れると、田中は苦笑しながらこう答えた。
「どこかで自信があるんでしょうね。まだプロで1球も投げていないくせに」
田中は自分の価値を誰よりもわかっている。周りの声に流されず、自分の可能性を信じて邁進できる。プロの世界でも一流になってくれるはずだ。6年前にはそう思っていた。