濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「スターダムを狙わない選択はない」女子プロレス新ユニット・プロミネンスとは何者か?「デスマッチは見たくない」の声に世羅りさの回答は
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/02/19 17:01
スターダム後楽園大会に乱入したプロミネンス。リング上で睨み合う朱里と世羅りさ
寮で寝食を共にしたジュリアとすず
1.29名古屋大会のリングに乗り込んだプロミネンス。世羅はマイクを握るとジュリアを呼び込んだ。かつて、アイスリボンから半ば強引に“電撃移籍”したジュリア。すずはジュリアの頰を張り「私はお前のことを信じてたのに、どれだけ迷惑かけたか分かってんのか!」と詰め寄る。目には涙が浮かんでいた。ジュリア率いるドンナ・デル・モンド(DDM)とプロミネンスの乱闘はバックステージでも。濃厚な因縁を背景とする対立は、こうして始まった。
ジュリアへの気持ちを“愛憎”と表現したメディアに、すずは「憎しみしかない」と返している。2人の関係を、世羅はこう語った。
「すずにとってすぐ上の先輩がジュリア。2人とも(アイスリボンの)寮に住んでいたので、ずっと一緒でしたね。寝食を共にして、2人で事務所に来て仕事して、道場で練習して、試合して、また2人で帰っていく」
ジュリアのいない大会で誓った「私がエースになる」
2019年秋、ジュリアが離脱した直後の大会で、すずは涙を流しながら「次期エース候補と呼ばれる人がいなくなって、これからは私がアイスリボンを引っ張る」と宣言した。まだデビューから1年も経っていない17歳が、そう決意したのだ。すずは“若手”枠から抜け出してタイトル戦線に参入、翌年夏にICE×∞のベルトを獲得する。
「すずもジュリアがエースになるのを楽しみにしてたんじゃないですかね。でもジュリアは何も言わずに去ってしまった。それは憎くもなりますよ。でも、すずが偉かったのはそこで“なら私がエースになる”と言って状況に立ち向かったこと。逃げなかったんですよ」
2人の先輩である世羅も、すずとジュリアが闘うことになったらどんな試合になるか想像できないという。確実なのは激しいものになるということだけ。どんな内容であれ、大事なのはリングで試合をすることだとも言う。
「プロレスラーなんだからプロレスやろうぜってことですよ。口で言い合うだけなら誰でもできますから。憎しみがあっても、プロレスラーはそれをリングでぶつけ合えばいい。たぶんお互い“アイツになら何やってもいい”って思ってるはずです。ジュリアも、すずのことになると感情的ですよね」
世羅の本音「ジュリアが“取っ掛かり”になったのも事実」
何をやってもいい。プロレスラーがそう思えるのは、相手を認めているからでもある。厳しい攻撃をするのは、相手がそれを受け切れると信じているからなのだ。
「離れてからも、お互いの試合は見てたでしょうからね。意識してないはずがないので。今どれだけの力があるか、2人とも分かってると思いますよ。
私も、ジュリアがスターダムでやってきたことは認めてます。一緒にやってた頃とは別人ですよ。昔は何か遠慮してるというか“隠してるものがあるんじゃない? もったいないよ”という感じでしたから。スターダムに乗り込むにあたって、ジュリアが“取っ掛かり”になったのも事実ですし」