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「スターダムを狙わない選択はない」女子プロレス新ユニット・プロミネンスとは何者か?「デスマッチは見たくない」の声に世羅りさの回答は

posted2022/02/19 17:01

 
「スターダムを狙わない選択はない」女子プロレス新ユニット・プロミネンスとは何者か?「デスマッチは見たくない」の声に世羅りさの回答は<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

スターダム後楽園大会に乱入したプロミネンス。リング上で睨み合う朱里と世羅りさ

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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Norihiro Hashimoto

 “フリーの女子デスマッチユニット”は、おそらくプロレス史上初だろう。アイスリボンで活躍してきた世羅りさ、鈴季すず、藤田あかね、宮城もち、柊くるみが結成した「プロミネンス」だ。

 昨年いっぱいで古巣から独立し、フリーとして活動。さまざまな団体に上がっている。業界トップの女子団体スターダムにも「ケンカを売りに」行き、元同門のジュリアたちと大乱闘を展開した。目下、女子プロレス界の台風の目と言っていい。

後楽園ホールで蛍光灯デスマッチも行った世羅りさ

「フリーになってみると、団体所属の頃とは全然違いますね。とにかく楽しい。文字通り自由だなって。団体の中にいると守られてるんですよね。大切にされてたんです、いい意味ではあるにしても。以前はそのことに気づいてもいない、完全な井の中の蛙でした。でも今は自分たちにも、オファーをくれる人たちにも遠慮がない。何をするのも自分たちの実力しだいです」

 そう語るのは、プロミネンスを率いる世羅りさ。実は数カ月前まで、プロレスをやめるつもりだったという。

 彼女はアイスリボンのデスマッチ/ハードコア路線を牽引してきた。団体は埼玉県蕨市に道場兼常設会場を構え、地域密着で活動。子供のファンもいるからデスマッチはふさわしくないという懸念や批判もあった。その中で少しずつ道を切り拓く。そんな世羅の姿を見て「私もデスマッチをやりたい」と入門してきたのが鈴季すずだった。

 昨年、すずは「ハードコア七番勝負」を男子選手相手に敢行。世羅は6月の後楽園ホール大会で山下りなと蛍光灯デスマッチを行なっている。アイスリボン初の蛍光灯デスマッチであり、大会のメインイベントでもあった。

 この試合で世羅は敗れたが、躊躇なく蛍光灯で殴り合うのが楽しくて仕方なかったという。観客の拍手は鳴り止まず、勝った山下は世羅に「アイスリボンでデスマッチを続けてくれて、諦めないでいてくれてありがとう」と語りかけた。間違いなく、日本における女子デスマッチのマイルストーンだった。だが本人は「天井を見た」気持ちになってしまった。

「アイスリボンでここまでできた。同時に、アイスリボンでやれるのはここまでだなって。これ以上激しい試合形式はできないだろうし、もうデスマッチがメインになることもないだろうなっていうのが私の感触でした」

「マットプロレス」でスタートしたプレ旗揚げイベント

 もともと、10年を区切りにプロレスをやめようと思っていた。2012年11月デビューだから、今年が10年目。そろそろ潮時かなと漏らすと「それなら自分もやめる」と言う仲間がいた。「独立するなら一緒に」とも。それがすずであり藤田あかねだ。あかねがチームを組んでいた宮城もち、柊くるみ(負傷欠場中)も誘うと、全員「即決」だった。

 既存の団体に上がるだけでなく、自主興行もスタートさせた。1月から3月までのプレ旗揚げイベントは、ライブハウスを会場にリングを組まない「マットプロレス」での開催。4月24日に正式な旗揚げ戦を新木場1stRINGで実施する。世羅はそこで、デスマッチ団体FREEDOMSの社長である佐々木貴と対戦する。

「貴さんは義理人情に厚い、尊敬するところしかない人。リーダーとして、試合をすることで学びたいですね。試合はもちろんデスマッチ。蛍光灯はマスト、プラスアルファで何を使うか考えてます。山下との蛍光灯デスマッチを超えたいというのも目標の一つですね」

 最初からリングでの試合にしなかったのは「不自由や苦労を味わっておきたい」と思ったからだ。1月16日、最初のイベントはチケット完売。想定よりも試合をするマットスペースが狭くなった。ステージでも闘ったら、受身の音が響いて下のフロアの店舗から苦情がきたそうだ。

「そこまでは予想できなかったです(笑)。申し訳ない。でも制限された環境でハードコアマッチ、凶器を使う闘いができたのは楽しかったですね。狭い中でもやりようがあるというか。不自由だからこそ頭の使いがいもありますし」

【次ページ】 「全団体のチャンピオンにケンカを売りたい」

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