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「スターダムを狙わない選択はない」女子プロレス新ユニット・プロミネンスとは何者か?「デスマッチは見たくない」の声に世羅りさの回答は
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/02/19 17:01
スターダム後楽園大会に乱入したプロミネンス。リング上で睨み合う朱里と世羅りさ
迎え撃つ朱里&テクラも負けるわけにはいかない
DDMとの抗争が試合としてスタートするのは、2月21日のスターダム後楽園ホール大会。世羅りさ&藤田あかねvs.朱里&テクラのタッグマッチだ。2020年、スターダム入団前の朱里がアイスリボンに最後に参戦した時の相手が世羅だった。テクラも元アイスリボン。あかねとの試合を最後に離脱し、今年からスターダムに戦場を移した。
現在、朱里はワールド・オブ・スターダムのベルトを巻いている。テクラはSWA世界王者。しかしアイスリボン最後の試合ではどちらも負けている。朱里とテクラにとっても、プロミネンスは格好の標的だ。世羅は3月26日、27日の両国国技館大会を「ぶっ潰す」とアピールしているが、団体を背負うチャンピオンの朱里としては、それを許すわけにはいかない。「朱里さんもスターダムで変わりましたね」と世羅。
「もちろん前から強かったんですけど、後輩も含めてみんなに優しい、気を使う人というイメージがあったんですよ。でも今はチャンピオンのオーラ、絶対的な自信を身にまとってますよね。
今は朱里さんがスターダムのトップのベルトを巻いている。これは狙うしかないでしょう。タッグとはいえ対戦して、勝てば(タイトル戦を)やらざるを得ない流れになるんじゃないですか。すずはジュリアしか見えてないしそれでいいけど、私はそうじゃない」
「デスマッチは見たくない」というファンの声には…
プロミネンスがスターダムに乗り込むと、ファンからは「デスマッチは見たくない」という声も上がった。だが世羅たちは通常ルールでも実力者であり、スターダムでデスマッチをやる気はない。1.29名古屋大会のインタビュースペースでも、そう明言している。
「デスマッチをやると言ってないのに“見たくない”と言われるってことは、それだけ自分たちのデスマッチにインパクトがあったってことでしょうね。それはありがたいですよ。“お前ら誰?”っていう反応より全然いい。でも私は通常ルールでベルト総取りまで狙ってますから。闘うのもDDMだけじゃない。DDMを潰したら大江戸隊、STARS、コズミック・エンジェルズ、Queen's Quest、全ユニットやってやるから待ってろよって」
実際、プロミネンスがタイトル戦線に本格参入してくれば、スターダムの勢力図が一変する可能性もある。女子プロレス界屈指の重量級ファイター、くるみは夏に復帰予定。そうなれば「戦力は10倍ですよ」と世羅は言う。足し算ではなく掛け算になる存在というわけだ。ただ、あまり先を見てもいられない。必要なのは目の前の試合にすべてを注ぎ込むことだ。
「スターダムに関していま考えてるのは、2月21日の試合をどう闘うか。それだけですね。そこでヘタな試合をしたら、両国をぶっ潰すどころじゃなくなりますから。我々はフリーですからね。ケンカを売りながらも、プロモーターに“もういらない”って言われたらそこで終わり。いつ切られて仕事がなくなってもおかしくない。それがフリーだと分かってます」
「スターダムなんてやりがいのある相手しかいない」
その覚悟もまた、プロミネンスの強さにつながるだろう。スターダムでは外敵というポジション。自分たちにとっても新鮮だという。
「プロレス界には対戦してない選手がたくさんいる。スターダムなんてやりがいのある相手しかいないですよ。新しいことをやって、今までにない自分たちの可能性が見えてくるかもしれない。団体の中にいたら分からないことってあるんだなと」
女子デスマッチを開拓する集団として、また全方位の“ベルトハンター”として、プロミネンスへの期待は大きい。それはすべての女子プロレス団体にとって、大きな脅威だということでもある。スターダムも例外ではない。
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