濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「スターダムを狙わない選択はない」女子プロレス新ユニット・プロミネンスとは何者か?「デスマッチは見たくない」の声に世羅りさの回答は
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/02/19 17:01
スターダム後楽園大会に乱入したプロミネンス。リング上で睨み合う朱里と世羅りさ
「世の中は決まりきったことばかりじゃない」
プロミネンス4人だけが出場するライブハウスでの闘いは、いきなり野球を始めてみたり、足ツボマットの上に投げたりといった、言わば“明るいハードコア”になった。勝手にそうなったのだそうだ。
「気心知れたメンバーですし、何よりやりたいことをやっているので楽しさが前面に出たんでしょうね。ハードコア、デスマッチといっても殺伐としたものだけじゃない。プロレス自体、喜怒哀楽いろんな感情が出るものじゃないですか。ハードコア、デスマッチも同じだと思います。まして自分たちはこれをやりたくてやっているので」
凶器攻撃を食らえばもちろん痛い。血も出る。けれど彼女たちにとってそれは“苦行”ではない。これがやりたいんだ、これをやれるのが嬉しいんだ。その気持ちが試合の明るさにつながる。
「プロミネンスという名前は、太陽のコロナの中に突出する“紅炎”から。自分たちはコロナ禍で飛び出す存在になりたいんです。どんよりした世の中で“アイツら好きなことやって楽しそうだな”と思ってもらえたら。こういうことを好きでやってる人間もいるんだよ、世の中は決まりきったことばかりじゃないよ、と」
デスマッチをやりたいという女子選手が他団体にもいたら大歓迎、プロミネンスの興行に出てもらっても、自分たちが乗り込んでもいいと世羅。
「自分たちが“壁”になりますし、まず経験してみてほしい。デスマッチやハードコアをやってみたいと思ってる、その気持ちを秘めている女子選手、絶対いると思うんですよ」
「全団体のチャンピオンにケンカを売りたい」
ただ、プロミネンスの活動はデスマッチ路線だけに限らない。そもそも彼女たちは通常ルールでも実績充分だ。世羅、すず、くるみはアイスリボンの頂点であるICE×∞王座を獲得したことがあり、世羅、くるみ、もちはタッグ王者でもあった(世羅は最多防衛タイ記録を保持)。あかねも3つのシングルベルトを獲得している。そんな面々がフリーとなり、しがらみなしで活動している。
古巣アイスリボンへの参戦は、1月23日の福島大会が最後になった。世羅は大会後、新型コロナウイルス陽性反応者、濃厚接触者の発表に関する団体への不信感をツイッターで吐露している(団体側は適切だったと反論)。ただそうなる前から、アイスリボンに長く出続けるつもりはなかった。直後の1月29日にスターダムのリングに乗り込んだから勘繰られがちだが、実際には「笑って“お世話になりました”と言いたかったんですけどね」と世羅。
「(アイスリボンで試合をしなくなることは)関係が円満だった頃から決めていたことです。独立したのに古巣でばかり仕事してたらおかしいし、他に仕事ないのかって逆に心配されちゃうじゃないですか」
せっかくのフリーランスだ。どの団体と交渉してもいい。気持ちとしては「全団体のチャンピオンにケンカを売りたいくらい」。団体を出て業界を見渡すと、まだ試合をしたことがない選手がたくさんいた。自分たちにとってもファンにとっても楽しみな“初対決”が山ほど残されているということだ。スターダムも当然、ターゲットになった。
「どこにでも行けるのに、一番大きい団体(スターダム)を狙わないという選択はないですよね」