熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
「アユムとホワイトの友情が…」「取材後、ホテル着が翌日の朝5時!」現地で唯一のブラジル人記者に“北京五輪への本音”を聞いた
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byDanielle Parhizkaran - USA TODAY Sports/JIJI PRESS
posted2022/02/19 11:04
日本中が沸いた平野歩夢の金メダルと、ショーン・ホワイトからの祝福。ブラジル人記者の心も揺さぶったようだ
「アユムの驚異的なパフォーマンスとレジェンドであるホワイトの引き際、そして2人の友情が強く印象に残った」
――今大会では、審判の判定が物議を醸したケースが多々あります。スキージャンプ混合団体のスーツ規定違反による高梨沙羅ら4カ国5選手の失格、スピードスケート・ショートトラック混合2000mリレーでの中国有利と思われる判定、スノーボード平野の決勝2度目の試技の低得点、スノーボード女子パラレル大回転の竹内智香の失格などなど……。
「スキージャンプの多数の選手の失格は不可解だった。わずか数日前に使用して問題がなかったスーツが規定違反というのは、理解に苦しむ。しかし、それを除くと、いつの大会でも起きる問題のように思える。個人的には、中国に特に有利な判定が多いとも感じていない」
ワリエワのドーピング問題についても……
――女子フィギュアスケートのカミラ・ワリエワのドーピング問題については?
「昨年末の大会での陽性がなぜ今頃判明したのか、それでもなぜ継続して出場できるかなど、不可解な点が多い。公平な条件で競技をするのがスポーツの原点。ロシアの国家ぐるみのドーピング疑惑を含め、非常に残念な問題であり、IOC(国際オリンピック委員会)の運営能力が問われている」
――今後のブラジルのウインター・スポーツの未来をどう予想しますか?
「ブラジルは、気候、練習施設など多くの面で大きなハンディがある。しかし、スポーツ省は強化に力を入れ始めている。有力選手は、スポーツ省から経済的な援助を受けながら、副業をするなどして競技生活を続けている。彼らが世界トップクラスに到達するのは容易ではないが、可能性はゼロではない。将来、メダルを獲得する選手が出てきたら、国内での関心も高まるのではないか」
ブラジルでは地上波の五輪中継が全くない
ブラジルでのテレビの五輪中継は、地上波では全くない。有料のスポーツチャンネルの一つが、ほぼ1日中、各種競技を録画を含めて放送している。
とはいえ、ほとんどの種目にブラジル人選手が出場しておらず、盛り上がりに欠ける。サンパウロに住む筆者の知り合いのブラジル人に聞いたところ、毎日、北京五輪の放送を視聴しているという人はいなかった。五輪が行なわれていることすら知らない人も多かった。
これがブラジルの実情であり、他の南米諸国でも同様のようだ。