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平野歩夢の圧巻の滑りに「マジマッ!マジマッ!」スノボ人気薄の韓国で解説者が絶叫したワケ《なぜかソウル大卒の俳優が解説》
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph byJIJI PRESS
posted2022/02/13 11:04
スノーボード男子ハーフパイプ決勝で圧巻のパフォーマンスを披露した平野歩夢
「彼の演技を見ると分かりますが、アユム選手は膝を胸のほうにグッと引き上げるのですが、回転の規模が小さく見えることが、あえて言うならば短所なのでしょうか。スコッティ・ジェームス選手は同じ技でも規模が大きく見えますからね」
アナウンサーが「それは20センチも身長差があるので……」と話すと、解説者が「ハンディタイプの扇風機と通常の大きな扇風機の違いだけです……」と返答。その矢先に画面に96.00の得点が表示された。
「ワーーーー! トゥディオーーーーーー! トゥディオーーーーーー!(ついにーーーーーー! ついにーーーーーー!)」
実況:「身体の限界は障壁ではありません!!」
解説:「その通りです!! NBAのアレン・アイバーソン(史上最も身長が低いドラフト1位の選手、183センチはNBAでは小柄)がこう言っています! 『体のサイズでプレーしているんじゃない、ハートでプレーしているんだ』と」
実況:「ハート……その通りです。肝臓を損傷する大ケガから復活し、再び立ち上がり完成させた技術で、五輪で審判たちを説き伏せました! 見てくださいこの身長差!」
解説:「トリプルコークは身長ではなく、ハートでやるものなのです!」
日本の解説者なみの感情移入のすごさに最後まで聞き入ってしまったが、平野へのリスペクトと悲願の金メダル獲得を心の底から喜んでいるようだった。
スノボー人気が低い韓国でなぜ?
そもそも、韓国でのスノーボード人気は日本ほどではない。同種目において韓国には世界トップクラスの選手がいないということも、国民の関心の薄さに関係している。しかし、平野を知る韓国人は多いという。それは自国開催だった18年平昌五輪の影響が大きい。
平昌五輪で金メダルを獲得したショーン・ホワイトと死闘を演じた平野を記憶している人が多いからだ。
体格や身体能力で勝る欧米選手に体の小さなアジアの選手が躍動する姿はインパクトを与えるに十分。今回の北京五輪でも再び4年前と同じ戦いになるだろうということで、注目度も高かったようだ。それに平野は14年のソチ五輪と18年平昌五輪は銀メダルだったこともあり、「今回こそは金メダルが取れる」という話題性もあったに違いない。
だからこそ、この解説者も興奮していたのだろう。ただ、彼は一体何者なのか。気になって調べてみた。