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高梨沙羅16歳「1mでも先へ飛びたい」「浅田真央さんの考え方が参考に…」 “素朴で文武両道な女王”が語ったジャンプへの愛
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byStanko Gruden/Agence Zoom,Getty Images
posted2022/02/13 06:00
2012年の高梨沙羅。10代からW杯で勝利を積み重ねる偉大なジャンパーだ
大ジャンプを連発する高梨が持ち得ている技術とは?
「鳥みたいに飛ぶのが楽しくて。バレエとかほかの習い事とは違います。それくらい好きなんです」とジャンプを続け、高学年の頃にはナショナルチームの合宿に参加するようになった。高梨の名が一躍クローズアップされたのは中学2年のときだ。大倉山ジャンプ競技場で行なわれたHBCカップで、バッケンレコードとなる141mの大ジャンプを披露したのである。
中学3年生の昨シーズンは、ワールドカップの蔵王大会で初優勝を飾り総合3位。今シーズンの活躍は、毎年の着実な歩みの延長にある。
ナショナルチームの前チーフコーチであり、高梨を小学生時から見てきた渡瀬弥太郎氏は、常々、高梨のよさをこう語っていた。
「低い姿勢でしっかりスキー板に乗って助走できるから、体は小さくても大きい選手に負けないスピードが出せる。そのスピードを殺さずに踏み切れるし、空中動作も安定しています」
技術の高さは折り紙つきだ。その上で、何が活躍の要因となったのか。高梨本人はこう捉えている。
「こうすれば飛べる」形があるのでスランプに陥ることが少ない
「基本を大切にしてきたから。やっぱりそれをずっと頭に置いて練習してきたので、ちょっと悪くなったら基本に戻ればいいということです。基本とはどういうものかは微妙なんですけれど(笑)」
彼女の言う基本とは、おそらくは理想とするスタイルのことだ。
高梨はスランプに陥ることが少ない。2月2、3日に行なわれた札幌でのワールドカップは12位と5位に終わったが、ビデオの映像を観て立て直し、翌週の蔵王の大会では連勝した。修正の早さは、スタイルが身についていることの表れだ。そして、「こうすれば飛べる」といつでも立ち戻れる場所が築けているのは、選手としての強みである。
自分で修正できないときは父にアドバイスを求めたこともある。今年2月の世界選手権のときだ。高梨は、試合を前に思い悩んでいたと明かす。