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フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
《独占》日本アイスダンスの先駆者、キャシー・リードが今明かす“急逝した愛弟”クリスさんへの思い「彼はスケートを愛していました」
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2022/02/11 17:01
2014年の世界選手権で演技を行うキャシー・リード&クリス・リード組
師事した名コーチたちから学んだもの
アイスダンスに不可欠な華のある二人には、大きな期待が寄せられた。だが特に当時のアイスダンスは、まだあまり実績のない若手が年長の組を追い越して頭角を現すというのは容易なことではなかった。
「シングルは、ジャンプを成功させればトップに行けるアスレチックなコンペティションです。でもアイスダンスは、自分たちの順番を待たなくてはならなかった。他の国はもっと強いチーム、強いジャッジがいて、政治的にも強かった。でも今は、少しずつ変わってきています。小さな国は、まだ待たなくてはならないけれど、採点のシステムは少しずつ良くなっていると思います」
二人はより良い結果を求めて、自分たちに合ったコーチとトレーニング環境を模索した。
「結構コーチを変えました。自分たちに向いているコーチを見つけるのが大変でした。でもそれぞれのコーチから、本当に色んなことを与えてもらった。それぞれのコーチの好きなところ、嫌いなところも、全てが今コーチになった自分に役立っているのです」
キャシーたちは当初ニュージャージーでニコライ・モロゾフに師事し、当時彼の妻だったシェイ=リーン・ボーンの指導も受けた。その後、何人かのコーチを経てデトロイトに拠点を移した。師事したのはいずれも世界のトップコーチたちだが、具体的にどんなものを与えてもらったのだろうか。
「ニコライは振付師として素晴らしい。彼を見ていて、私も振付をやりたいと思いました。シェイ=リーンはアイスダンス、フィギュアスケートが大好きで、その愛を感じて情熱が育ちました。ガリト(・チャイト)はとても技術的なコーチで、ISU技術スペシャリストにもなりました。そしてマリーナ(・ズエバ)のところでは、全てのものが一緒になった。環境も最後に一番いいところが見つかって、引退は少し残念だったのですけれど……」
競技引退を決意した理由
2015年を最後に競技を引退した理由は、どんなことだったのだろうか。
「最後になったシーズンが始まるときは、引退するという気持ちは全くありませんでした。新しいシーズンを迎えてエキサイトしていて、前半は試合での調子もすごく良かったし、クリスの怪我の状態も安定していました」