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世界選手権の敗北、コーチからの卒業…4年間は宇野昌磨をどう変えたか「(鍵山に)いつまでも『尊敬している存在です』と言われるように」
posted2022/02/11 11:45
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Kaoru Watanabe/JMPA
試合を終えて姿を現したその表情は、ホっとしたような、あるいは晴れやかなようでもあった。
2月10日、団体戦での銅メダルに続き、男子シングルで銅メダルを獲得した宇野昌磨は、穏やかな空気に包まれていた。
この日のフリーの演技自体は、決して出来が良かったわけではない。2つ目の4回転サルコウは「q」マーク(ジャンプの回転不足を示す)がつき、続く4回転フリップは両手をついた。後半も4回転トウループを決め切れなかった。
「たくさんのミスが、いろいろなところに出てしまい、たぶん緊張していたのもありました」
でもその悔しさに勝る思いがあった。
「そうですね。4年間でいろんなことがあり、再びこの場所に立てていることをうれしく思います。1年前はここに立てるような存在ではなかったので、今日の演技がどうであれ、この順位というのはこの4年間の成果だと思うので、素直にうれしいです。こういう舞台に立って、こういう演技をして結果を残せて……。自分にとっても誇れることだなと思います」
4年前、初めて出場したオリンピックの平昌五輪で銀メダルを獲得。同地では4年後の北京五輪への抱負を尋ねられるとこう答えていた。
「僕は先のことはあまり考えないし、何が起きるか分からないので、あまりこれ、というのはないです」
その言葉が象徴するように、この4年間は様々なことがあり、試行錯誤を重ねた時間であり、その末にたどり着くことができた2度目の大舞台だった。
変わったのは“言葉”「これまでは自分のことだけでした」
4年間で宇野には明確な“ある意識の変化”があった。
平昌五輪に続き、その翌月の世界選手権でも銀メダルを獲得した宇野は、2018-2019シーズン、今までと異なる趣の言葉が増えていった。
アイスショーを前にしたときは「お客さんに少しでも楽しんでもらいたいという気持ちの変化があります」と語り、グランプリシリーズへ向けては「皆さんの期待に応えられるよう、精一杯、努力したいと思っています」と抱負を言葉にした。試合ごとに「楽しみたい。楽しむことを目指しています」と語っていたそれ以前との変化があった。