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15歳高木美帆が語った本音…“スーパー中学生”が挑んだ12年前の初五輪「普通に滑るのが難しい、がよく分かった」
text by
宮部保範Yasunori Miyabe
photograph byNaoya Sanuki
posted2022/02/17 06:00
2010年バンクーバー大会を終えてインタビューに応じた当時15歳の高木美帆。27歳で臨む北京大会では日本選手団の主将を担う
大会4日目の2月15日、高木は男子500mで長島圭一郎と加藤条治が銀・銅メダルを獲得する瞬間を目のあたりにした。
「すごく感動しましたね。短い間だけど、合宿で行動をともにしたわけじゃないですか。親近感が湧くっていうか、いつも以上にむっちゃ応援しました」
3日後の五輪初レースに向け、高木は徐々にテンションを高めていった。
2月18日、いよいよ高木は女子1000mで五輪デビューを果たした。レースの直前には、初めて経験する五輪の舞台を目に焼き付けるかのように、リンク中央のスペースを使って準備をしていた。ヘッドフォンをして、リズミカルに体をほぐす姿は堂々としていて、大舞台でも緊張を感じていないように見えた。
しかし、結果は35位。タイムは目指していた自己ベストから2秒近くも遅れた。
「最初のレースは、気づいたら終わってたみたいなところがありましたね。緊張っていうか、オリンピックだっていう特別な意識はあったかな。『普通に滑るのが難しい』って言われるのが、よく分かったなって感じです」
「15歳だからこんなもんでしょ」
五輪前に注目を集め、取材が殺到したことを負担に感じたのではないかと気になったが、「そういうのがどうとかは、なかったですね」と否定した。しかし、初舞台で自らの力を出し切れなかった。
「でも、この歳だからしょうがないって思うのは、好きじゃない。15歳だからこんなもんでしょ、みたいなのは嫌なんです。だから、レースが終わって靴を脱ぎながら、もっと出来たのかなって思い始めた。結構、ズーンって感じになって(笑)。あの時はちょっと落ち込んでいたのかなあ」
高木はそれまで、悔いの残るレースをほとんどしてこなかったという。できれば、もう1本1000mを滑りたいという気持ちだった。その悔しさを、この五輪で二度と味わいたくないと思った。
「それで、次の1500mには、タイムは出ないかも知れないけど、力を残すことだけはしないようにって、挑んだんです」